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» 2011年03月10日 12時03分 UPDATE

NHK記者が語る、“無縁社会”の正体 (1/4)

2010年1月に放送され、大きな反響を呼んだNHKのドキュメンタリー企画「無縁社会」。人間関係が希薄で、孤独死が増えているというが、現場を取材をした記者はどのような現実を見てきたのだろうか。NHKの池田誠一記者の声を紹介する。

[土肥義則,Business Media 誠]

 人間関係が希薄で、孤独死が増えている――。こうした日本社会の問題点をリポートするNHKのドキュメンタリー企画「無縁社会」。現場を取材した池田誠一記者は、無縁化する社会を見て、どのように感じたのだろうか。2010年9月に放送された『消えた高齢者 “無縁社会”の闇』の取材に携わったときのエピソードを語ってもらった。

※本記事は弁護士会館で行われた講演会(1月28日)で、池田さんが語ったことをまとめたものです。

無縁社会の実態を知りたい

yd_muen1.jpg NHK社会部の池田誠一記者

 私は厚生労働省の記者クラブに席を置き、介護や医療、生活保護などの問題を取材している。2010年の1月末に、NHKスペシャルで『無縁社会〜“無縁死” 3万2千人の衝撃〜』といったタイトルで放送し、多くの人から反響をいただいた。この番組では会社を退職し仕事を失えば組織とのつながりを失ってしまうこと、地域のつながりが希薄していること、家族との関係が変化していること、こうして人がどんどん孤立化している現状を取り上げた。そして最終的には孤立し、死んでいく……。番組では「無縁死する人がいる」といったことを放送した。

 自分の生まれ故郷は鹿児島県だが、そこを離れて、現在親と会う機会はほとんどない。東京に兄と姉がいるが、1年に1回会うかどうか。日ごろから頻繁にやりとりはしていない。自分自身を振り返ってみても、血縁のつながりが密接にあるわけではない。また地域のつながりを見ても、普段は会社で仕事をしているので、近所のつながりがほとんどない。例えば現在住んでいる街の「民生委員は誰ですか?」と聞かれても、答えることができない。取材で民生委員の方からお話を聞くことがあるが、自分が住んでいるところの民生委員のことは知らない。

 私は現在35歳。30年、40年が経ち、もし自分の妻が先に逝けば、1人で住むことになるだろう。そして認知症になれば「行政のサービスを受けたい」といった声を挙げられないまま、死んでいくかもしれない。

 その一方で「無縁社会というものが、今の日本社会の問題なのか?」ということを考えさせられた。今、起きていることが、どういう意味を含んでいるのか。昔と今を比較すると、日本社会はどのように違うのか。恥ずかしいことだが、取材をしていてその答えを見い出すことができなかった。

 そして2010年9月に放送された『消えた高齢者 “無縁社会”の闇』の取材に関わった。その番組を通して、自分の考えが大きく変わった。それまでの自分は「無縁社会はどういった課題を抱えているのか」「どうすれば解決につながるのか」といった視点がなかった。「無縁」といっても漠然としているので、孤立している高齢者、どこにもつながっていない高齢者がどのくらい存在しているのか、といった実態がよく分からなかった。そのことを、どこで、どのようにして調べれば、把握できるのか。この疑問を解決するために、取材を再スタートした。

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