羽田からニューヨークまでのフライト時間は、12時間35分。食事が終わっても、目的地到着まではまだたっぷり時間がある。私は前席の背もたれにあるテーブルとサイドのひじ掛けから引っ張り出すテーブルをドッキングさせ、その上にノートPCを広げた。
アメリカン航空は、米国ではとくにビジネスマン層から支持を集めるエアラインだ。席に着いたとたんにPCを開くようなタイプの乗客が多く、彼らと話すと「常にきちんと時間どおり飛んでくれれば、とりたてて特別なサービスは要らないよ」などという答えが返ってくる。そんな乗客に対し、客室乗務員も過剰にならない“さり気ないもてなし”を意識しているのかもしれない。私も4時間ほど仕事に集中し、連載コラムなどをいくつか機内で仕上げた。
離陸してそろそろ8時間になる。照明が落とされた機内では眠りについている人も多い。私もシートをフルフラットにし、一休みしようと思ったら、通路をはさんで隣の席にいる同行者の古庄氏がバッグから商売道具のカメラを取り出して撮影準備を始めた。こんな時間に何を撮るのか? 私が首をかしげると、彼は「もしかしたらと思って」と、モニターに映し出された飛行経路マップを指さした。AA134便はアンカレジを過ぎ、カナダ・バンクーバーの北部を東に向かって進んでいる。
「イエローナイフ上空か……」
時間帯も、ちょうど真夜中だ。天気もいい。窓のシェードを上げて北の空にレンズを向ける彼のうしろで、私も暗闇に目を凝らした。待つこと30分。やがてはるか前方に見えてきたのが、下の写真──オーロラだった。
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