ズームイン&アウトが自在、Preziで聴衆が“落ちない”プレゼンを郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2011年03月10日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

世界に広がるPrezi

 元はハンガリーのAdam Somlai-Fischer(アダム・ソムライ-フィッシャー)さんが、2001年に最初のズーミングプレゼンを自作。彼のプレゼンが評判になり、開発者のピーター・ハラシー(Peter Halacsy)さんと2人で2007年に初期バージョンを作った。その後、アルバイさんも参加し、誰でも利用できるソフトウエアを創り上げて2008年春に会社を創業。

 「昨日はソウルにいらしたんですね?」

 「はい、大歓迎されて。日本に来てからは、まず恵比寿でコロッケカレーを食べました」 

 親しみやすいキャラのアルバイさん、韓国ではPreziの熱狂的なファンに囲まれた。何しろPrezi韓国版はファンがローカライズしたくらい。Prezi本もすでに3冊出版されており、朝鮮日報(韓国最大、最古の新聞)にもインタビューされた。

 韓国だけではない。サービスインから18カ月で100万人が登録。現在220カ国、230万人の登録者はTwitterの急成長を思わせる。しかも、すでにキャッシュフローは黒字(収入源は有料ユーザー)。

 「PreziはTEDカンファレンスでも使われています。またTEDが投資した唯一の企業です」

 TEDとは世界の著名人が集結する一大プレゼンの場。今年はビル・ゲイツ氏も登壇した。そこでもPreziが使われる。世界経済フォーラム、スタンフォード大学、ハーバード大学、Facebook、IBM、Google、ノキアなどユーザーリストは壮観だ。

TEDカンファレンス公式Webサイト

プレゼン・ヒストリー概観

 改めて聞いてみたい、Preziはパワポと何が違うのだろうか? 質問するとピーターさんは「よくぞ」という顔で、プレゼンの歴史を3世紀以上さかのぼってプレゼンしてくれた。

 「18世紀、あるコーヒーショップ店主がいました。彼の名はヨハン・ゲオルグ。経営が思わしくないので、ランタンを使って死者を映し出すイベントで集客しました。これが評判を呼んで、各地で死者投影会を開催します。そのうちに彼自身が死霊に取りつかれたと思い込んで、発狂して自殺しました」

 プレゼンは人を永遠に眠らせることもあるのだ。

 「次は19世紀の黒板が発明です。米国では1801年に導入、“双方向のコミュニケーション”を勉強に取り入れました」

 それまでの勉強は先生が読み聞かせしていた。せいぜい生徒は復唱するだけの一方通行。ところが黒板を活用することで、例えば三角形の辺の長さや角度の説明が図示できて、質問も生まれやすくなった。ピーターさんは“Nonlinear communication”と言ったが、語り手と聞き手の間にやり取りが生まれたのだ。

 「そこから200年経ってパワーポイントが生まれました」

 1987年に米ForethoughtがMac向けにリリース、1990年にマイクロソフトが同社を買収してWindows向けにもリリース。ドキュメンテーション、テキスト、イメージが作れる画期的なソフトである。

 ……だが、眠れる(笑)。自称“パワーポインター”の私は、2003年バージョンを使わせたら神様レベル。あらゆるテクを使って描き込める。何しろパワポの歴史は、経営コンサルタントなる抽象思考大好き人間たちの歴史でもある。その結果、「どうだ、俺の考えは素晴らしいだろう」という自己満足という退屈なプレゼンが生まれるのだ。

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