今はネットでの情報発信、情報交換が発達している時代ですから、仕事の世界でも、趣味の世界でも、「シンデレラボーイ/ガール」があちこちに誕生します。ネットの口コミで話題になったラーメン屋が一躍「時の店」になることは頻繁ですし、YouTubeでネタ芸を披露した人(ペット動物さえも)が、1週間後にはテレビに出演し、人生のコースが大きく変わることはよくある話です。人生のいろいろな場面で、こうした「賞賛」という名の“持ち上げ”が起こります。
賞賛は、受けないよりは受けた方がいいに決まっているのですが、これも1つの試練です。賞賛によって、人は「謙虚さ」を試されます。芸能人ではよく目にすることですが、賞賛によって天狗(てんぐ)になってしまい、その後人生を持ち崩してしまう人がいます。賞賛は、わがままを引き出し、高慢さを増長させる働きがあるからです。
このことを古くから仏法では「八風におかされるな」と教えてきました。「八風」とはWikipediaの説明によれば、仏道修行を妨げる8つの要素で、「利・誉・称・楽・衰・毀・譏・苦」を言います。
このうち前半4つは四順(しじゅん)と呼ばれ、
で、どちらかというとポジティブな要素です。まさに称賛という試しは、この四順の中にあります。
ちなみに後半の4つは四違(しい)と呼ばれ、
といったネガティブな要素になります。これらは次の試しの段階にかかってきます。
野村さんが3番目にあげる試練は「非難」です。そう、世の中は「上げておいて、落とす」ことがあるわけですから。その人のやっていることが大きくなればなるほど、妬む人間が増えたり、脅威を感じる人間が増えたりして、いろいろなところから非難や中傷、批判、謀略が降りかかってきます。
野村さんは「賞賛されている間はプロじゃない。周りから非難ごうごう浴びるようになってこそプロだ」と言います。
自分を落としにかかる力をはねのけて、しぶとく高さを維持できるか、ここが一流になれるか否かの重大な分岐点になるでしょう。この分岐点は、いわば篩(ふるい)と言ってもいいものです。この篩は、その人の技量や才覚によって一流か否かの選別を行うのではなく、その人が抱く信念の強さによって選別を行います。結局、自分のやっていることに「覚悟」のある人が、非難に負けない人です。
芸術家として思想家として政治家として、生涯、数多くの非難中傷を受けたゲーテは言います――― 「批評に対して自分を防衛することはできない。これを物ともせずに行動すべきである。そうすれば、次第に批評も気にならなくなる」(『ゲーテ格言集』高橋健二訳より)。
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