若者はお金を持っていないんです!ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)

» 2011年03月07日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]
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高齢者にどう消費してもらえばいいのか

 この巨額の資産、先ほども書いたように60代以上の高齢者が世帯主の家庭がその6割を保有していますが、彼らは住宅取得も子育ても終わりかけた時期にあって、消費意欲は必ずしも高くありません。むしろ「老後のため」「万が一の時のため」に資産を貯金に留め置きがちです。

 そうやって使われないままになった資産は最終的には相続されるわけですが、日本の平均寿命は男性が79歳、女性が86歳くらいですから、財産を相続する子どもの方もすでに50代の場合が多くなり、これらの資金は相続を経てさえ消費意欲が高い若者に回ることはありません。

 この状況を放置していると、1400兆円の大半は塩漬けされたまま日本経済にまったく貢献しない資産となってしまいます。「預貯金や保険は金融機関が運用しているだろう」と言われるかもしれませんが、実際にはその多くが国債投資に回ってしまうなど、日本経済の活性化や雇用創出に必ずしも貢献していません。

 本来この金融資産は、日本の“内需拡大”の鍵となるものです。日本では今後、消費意欲の旺盛な若年人口がどんどん減ってしまいます。そんな日本で内需を拡大するには、この高齢者の貯蓄が消費に向かうことがどうしても必要なのです。

 これらの資産が消費に向かえば、反対側ではそれらの商品やサービスを提供する企業の売り上げが増えるわけですから、当然、雇用を増やすという効果もあります。高齢者が貯蓄を消費に回せば、若年者を含む労働者の給与としてそれらの資金が回ってくるのです。

 では、どんなビジネスが興れば、高齢者はお金を使ってくれるのでしょう? よく「高齢者は老後が不安だからお金を使わない」と言われますが、不安を解消してくれるのが貯金の額ではないことは、高齢者自身がよく理解しています。彼らがお金を使わないのは、「お金を使いたい」と思わせてくれるモノやサービスが不足しているからです。

 高齢者のお金を使わせることに成功しているビジネスとしては、孫ビジネス(孫の支援のために祖父母が支出する消費)や、ヨン様に代表される韓流ビジネスなどがありますが、この市場にターゲットした新ビジネスがもっと多く登場してもおかしくはありません。今でも多額の貯金を銀行に眠らせたまま、1日中テレビを見ている高齢者はたくさんいるのです。

 若者がこれらの高齢者に喜ばれるビジネスを興し、高齢者の貯蓄を自分達の所得として流動化させること。これがこれからの日本での内需拡大、ひいては雇用拡大に不可欠なのです。

 最近は起業をキャリアの選択肢の1つとして考える人も増えてきています。iPhoneなど世界で売る商品であれば、若者向けの市場は莫大であり可能性は大きいでしょう。でも日本で稼ぐのであれば、人数が減っていき余裕資金もない若者ではなく、巨額の資産を眠らせている“余裕のある高齢者”こそが、最も有望な市場であるはずです。

 この3月、ちきりんの“社会派で行こう!”では毎月曜日に、高齢者の消費意欲を刺激するビジネスに関する話題を順次取り上げていきたいと思います。

 そんじゃーね。

著者プロフィール:ちきりん

兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN

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