見過ごせない、世界そして日本の食糧問題藤田正美の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年03月07日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

穀物需要が増える要因

 需要のほうでは、中国やインドといった成長著しい国の消費増加も構造的理由として挙げられている。例えば米農務省は中国のトウモロコシ輸入を100万トンと予想しているが、米国穀物協会では900万トンに増えるという見方をしている。この差の800万トンという数字はとてつもなく大きい。米国のトウモロコシ期末(2011年8月31日)在庫の予想は1700万トン(21日分の消費量に相当)でしかない。これは15年来の最低水準であり、さらにバイオエタノール原料として消費されるトウモロコシが増えれば、過去最高値を突破する可能性が大きいと指摘する向きもいる。

穀物の需要量、生産量、期末在庫率の推移(出典:農林水産省)

 ただ、需給の逼迫(ひっぱく)といっても短期的な要素が主因であればやがて価格は下がる。しかし人口という構造的な問題は今後大きな問題になるとエコノミスト誌は指摘する。

 「2050年に食糧を現在の70%増産できるようになっていなければ、人口増加、発展途上国の大都市への人口集積、生活水準の向上や都市化がもたらす食事の変化に追いつけない。ただ食糧生産を大幅に増やすことは昔より難しくなっている。耕作可能な未利用地はほとんど残されていないし、水も足りない。肥料を余計に使っても収量の増加はしれている。小麦やコメの収量増加ペースが1960年以来初めて、世界の人口の増加率を下回った。70億人という現在の人口に十分な食糧を供給できていないというのに、2050年に果たして90億人に供給できるのだろうか」

 人口が増えるという問題だけではない。中国やインドが代表的な存在だが、豊かになってくれば肉の消費が増える。FAO(国連食料農業機関)の推計によると、1961年に比べて2050年の肉の消費量は6倍、乳製品は4倍になるという。畜産がそれだけ増えるということになるが、牛や豚が食べるのは主に穀物だ。1キロの牛肉を育てるためには8キロから10キロの穀物などが必要と言われている。ここにも穀物需要が増える要因がある。

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