こんな中小企業はオススメしない――6つのポイント吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年03月04日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

キーマンにはあくどい人も

 (2)についていえば、キーマンは創業に近いころからいる主(ぬし)的な存在であり、社長の信頼を勝ち得ているケースが多い。中川氏は、このキーマンとライバル関係にある社員の存在が大切だという。「この社員がキーマンに不満を持って部下を連れて退職し、それにより主要取引先を奪われ、業績が悪化することがある」。

 私の観察では、キーマンにはあくどい人もいる。例えば、4年前に取材した水産食品の卸売会社(社員数60人)に勤務する専務である。そこを退職した社員によると、彼は社長を支えるフリをしながら、実はその権力を利用し、長年にわたりやりたい放題のことをしていた。こういう話は、中小企業では珍しいことではない。

 中川氏は、(3)の会社はIT系の会社に見られるという。例えば、社員が10人ほどなのに社長室を設けたうえ、秘書を雇っていた社長がいたようだ。この会社もその後、倒産した。「そのような経営的な余裕はないはず。ところが、社長に苦言を呈することができる社員がいない」。

 面接時にそこのフロアをさらりと見渡し、社長室とか専属の秘書などがいないかも注意したい。少なくとも30人以下の会社ではこれらは不要と私は思う。中小企業は経営基盤が弱い以上、トップがグイグイと引っ張ることは間違いではない。だが、違った方向にリードしてしまう経営者がいる。その象徴が、“社長ごっこ”なのだ。

 これと似たようなものとして、行き過ぎた一族経営も挙げられると思う。例えば、これは私の調べ方だが、そこのWebサイトで役員構成を見て、同じ苗字が2〜3人以上いるときは、一族経営である可能性が高い。また、地元の商工会議所の機関誌に経営者や役員のリストが載るときがある。それを閲覧するだけでも、役員構成は分かる。

 だが、中川氏はこう語る。「一族経営そのものが問題ではない。創業経営者を会長としておき、それにより求心力を保ち、息子たちが社長や役員を務め、安定した経営をしている会社もある。一族経営により会社をどのようにしていくのか、そこが問われるべきだ」。

 私は上昇志向が強い学生が特に社員が50人以下で、一族経営の会社に行くことはオススメできない。それでも行くならばとりあえず5〜8年働き、ある程度の職務遂行能力を身につけた段階で転職するのも1つの選択だと思う。

 一族経営の会社では、その家族をおびやかす優秀な社員の前途は必ずしも明るくない。利用するだけ利用されて何かのきっかけで追い出されることもある。あくまで、この家族のための会社なのだ。

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