展示空間がジャングルに!? 曽根裕展を見逃すな!(2/3 ページ)

» 2011年02月22日 15時26分 公開
[上條桂子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム

 ジャングルの中に入る前に、左手の展示室に行ってみよう。このスペースでは、曽根裕氏の初期のビデオ作品が2つある。どちらもコミュニケーションをテーマにした作品だ。

 1995年に制作された「ナイト・バス」という作品。深夜の長距離バスに1人で乗ったときに感じる、なんとも言えない気だるい感覚。友人5人に手紙を書き、自分の代わりに旅をしてもらい、その風景を記録し編集したものだ。延々と続く夜行バス越しの風景は、作家本人は見たことのない、ひょっとしたら旅をしている本人も見ているかどうか分からない非日常の世界である。

 次に「バースデイ・パーティ」という作品。1997年にドイツで開催された「第4回ミュンスター彫刻プロジェクト」に出品された作品だ。毎日のようにミュンスターで出会った友人や知人の家に行き、あるいは見ず知らずの人のところへ突然ケーキを持って押しかけ「ハッピバースデー!」と自分の誕生日を祝う。もちろん、この毎日が曽根氏の誕生日であるはずがない。しかし、そんなことを知る由もない人々は嬉しそうに誕生日を祝う。曽根氏は、「自分の誕生日」というハプニングを通して、「幸せな時間」を人々の心に刻み込んだのだ。この映像作品は、彫刻作品として展示された。

エキサイトイズム

 展示室の真ん中は、鬱蒼と緑が生い茂るジャングルが作られていた。葉っぱを避けながら中に入っていくと、見事な大理石の作品が鎮座している。

 ジャングルを抜けるとそこにはニューヨークの街並み。マンハッタン島を丸ごと彫刻にした「リトル・マンハッタン」である。

エキサイトイズム 「リトル・マンハッタン」2010年、大理石、85×265×55センチ

 ニューヨークに住んでいたことがある人や詳しい人はじっくりと地図と照らし合わせてほしい。空撮の写真と膨大な資料を基に作り上げたそうだが、建物や街並みのリアルさはもちろん、どこから見ても圧倒的な存在感がある。

エキサイトイズム

 職人の技術の精巧さもすごいと思うが、マンハッタン島を丸ごと彫刻にするという発想とそれを見事な彫刻作品として完成に導けるのは、アーティストとしての才能以外の何ものでもない。隅から隅までじっと見ていても飽きない作品である。

 ジャングルのような大自然の象徴と、自然物を削り出すことで作られる人工的な造形。そして時間や記憶を刻み込む映像というスタイルでの彫刻作品。何が自然で何が人工なのか、そんな境界を考えさせられたりもするが、そんなことは気にせずに、その境界をゆるやかに行き来する感覚が面白い。すべての作品がダイナミックかつ繊細ゆえ、一点一点と向き合ってじっくりと作品と空間を堪能したい。3月27日まで。

曽根裕展 Perfect Moment

開催中〜3月27日まで

東京オペラシティ アートギャラリー 東京都新宿区西新宿3-20-2

開館時間:11:00〜19:00(金・土は20:00まで/最終入場は閉館の30分前まで)
、月休(祝日の場合は翌火曜日)入場料:一般1000円

お問い合わせ:tel.03-5353-0756


Copyright (C) 1997-2014 Excite Japan Co.,Ltd. All Rights Reserved.