当初、有楽製菓はブラックサンダーを九州地区限定で試験的に販売していた。主な販売チャネルは駄菓子屋など、地域の小規模な小売店で、量販店やコンビニなどといった成長チャネルとの取引はほとんどなかった。
しかし、九州地区で販売を開始してから5年間、低迷が続いた。原因は、ブラックサンダーのターゲットと、販売チャネルの利用者層がマッチしなかったことにあった。だが、販売チャネルを増やそうとしても、販売実績がないので量販店やコンビニに置いてもらうことは困難で、開発担当者は「一度は販売中止を本気で検討するほどだった」という。
そんな中、有楽製菓が販売チャネルの開拓先として目を付けたのが、若者が集まる大学生協であった。30円と低価格でありながら、ボリュームが多いという、まさに学生向けのセールスポイントをアピールしたことによって、いくつかの大学生協で扱ってもらえるようになったのである。販売を開始すると、そうしたセールスポイントが狙い通り学生に支持され、京都大学生協では菓子部門で売上1位を獲得するほどの人気となった。
開発担当者は「大学生協での成功で、『若者が買う場所にさえブラックサンダーを陳列できれば売れる!』と思いました。営業現場は自信を持つようになりましたね」と当時を振り返る。
有楽製菓は大学生協で売れた実績を引っさげて、若者へのメイン販売チャネルであるコンビニでの展開に向けて動き出す。しかし、ブラックサンダーの売り上げはまだ少なく、大手メーカーでもないこともあって商談の機会はなかなか得られなかった。
そんなある日、有楽製菓はセブン-イレブンにパイプをもつ卸売会社の協力を得て、商談の機会を獲得する。そこで、京都大学などの大学での販売実績や、低価格でありながらボリュームが多いという点をアピールしたところ、その当時コンビニ各社が取り組んでいた“ついで買い”によって客単価アップが狙える商品として、九州地区限定ではあるものの試験的に発売が決定。ただし、3カ月という試験販売期間が定められ、もし販売が不調であれば、即取引停止という厳しい条件であった。
ところが、九州地区のセブン-イレブンでの売り上げが好調に推移したことによって、3カ月が経って以降も契約を継続することとなる。そして、九州地区での販売好調を受けて、全国のセブン-イレブンにも採用されるようになり、さらにローソンやファミリーマートなど、ほかの大手コンビニチェーンへの展開も可能となった。その販売チャネル拡大にともなって、売り上げは急上昇することになる。
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