中国、要注意だ藤田正美の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年02月21日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

出稼ぎ労働者が減少

 地政学的分析をする米国の情報企業Stratforが2月13日付けで分析を試みているので紹介する(参照リンク)

 2010年、中国は慢性的な労働力不足に悩まされてきたが、その傾向は今年も続きそうだ。例年、春節の時期には労働力が不足する。しかしデータを見ると、この状態が恒常化すると懸念されている。内陸部の開発が進むことで、内陸で労働需要が高まり、沿岸部に移動していた出稼ぎ労働者が減る。

 現在の労働者不足はいくつかの新しい傾向が見て取れる。第一は季節性の労働不足ではないということ。中国の労働力調査センターの統計によると、求人倍率は2010年通年で1.01となり初めて1を上回った。春節を含む第1四半期が1.04、第4四半期が1.01である。この数字から2011年はさらに労働力不足が顕在化するという懸念が高まっている。

 第二は、2010年末以来の労働力不足の大きな要因は、出稼ぎ労働者の減少だということだ。前述の調査センターの統計によると、2010年第4四半期の需要はむしろ50万人ほど減っている(全国116都市の調査)。それでも求人倍率が1を上回ったということは、沿岸部に出稼ぎに来ていた労働者が、春節を避けて早めに郷里に帰ったということを示唆している。それは彼らが郷里で仕事を見つけたということも同時に意味している。

 これまでは中国沿岸部で目立っていた労働者不足は、最近は四川省など内陸部でも目立つようになった。伝えられるところによれば、内陸部の市では、沿岸部から労働者を送って欲しいという要請を拒否しているという。

労働力をめぐる問題の背景

 こうした労働力をめぐる問題の背景には、経済社会の発展に伴う地域の人口構成の変化がある。一人っ子政策によって労働市場への参入が減っている。この傾向は今後10年間は変わらない。この減少傾向は、とりわけ25歳から35歳という出稼ぎ労働の中心部分で厳しい。まだ田舎には1億人の労働力が余っているとされているが、都市に流入する労働者の増加率は低下することが見込まれ、その結果、賃金を押し上げることになる。

 内陸部での労働力不足は、過去3年間の中央政府の政策がもたらしたものでもある。内陸部の経済を発展させる計画に基づいて、外国資本の導入を図った結果、中国東部では出稼ぎ労働者が8.5%減ったのに対し、中部では3.8%、西部では4.8%増加した。その一方、沿岸部ではストライキが発生し、賃金コストが上昇している。このため工場を内陸部に移す企業も出ている。

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