創業1300年! 世界最古の温泉宿に行ってみた――慶雲館52代当主・深澤雄二氏(前編)嶋田淑之の「リーダーは眠らない」(4/6 ページ)

» 2011年02月18日 08時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

大自然を体感できる露天風呂

 こうした温泉の実態を踏まえた上で、再度、西山温泉慶雲館を眺めてみると、いかに希少価値の高い存在であるかが実感できるはずだ。深澤さんは言う。

 「当館では源泉に対して一切、加水も加温もしていませんし、塩素も使用していません。もちろん、入浴剤も入れていません」

 湧出温度が52度と少々高いが、温度調節はどのように行っているのだろうか?

 「湯船に出す湯量を調整することで、自然に適温へと下げることができるんですよ」

 泉質はナトリウム・カルシウム・硫酸塩塩化物泉で、浴用の適応症は胃腸病や神経痛など21種類、飲用は慢性胆のう炎・糖尿病など7種類が書かれている。

 「これは期待が持てそうだ!」と感じた私。その“温泉力”を確かめるため、編集H氏とともに、部屋付き露天風呂を含む、館内の風呂巡りをしてみることにした。

 慶雲館の8つの風呂のうち、露天風呂1つと内風呂2つは1300年前からの自然湧出泉と2005年の掘削自噴泉とをブレンドして出し、ほかの露天風呂3つと部屋付き露天風呂2つについては掘削自噴泉を出している。

掘削自噴泉を使った露天風呂「白鳳の湯」

 ブレンド泉と掘削自噴泉の違いは歴然だ。自然湧出泉とのブレンド泉の方が、はるかに肌への当たりが柔らかなのだ。川野総務部長は大きくうなずいて言う。

 「まさにそうなんですよ。1300年前からの湯はまろやかで柔らかく、2005年の掘削自噴湯の方は若く荒々しい個性を持っています」

内風呂の「石風の湯」
部屋付き露天風呂

 1泊2日の取材で全部で8回入浴してみて感じたことがある。それは湯疲れや湯当たりをしないということ。やはり、塩素が入っていないことに加えて、自噴泉の温泉力のなせるワザなのだろうか。

 どのお風呂にも独自の個性と魅力があふれているのだが、一番のお勧めとして私と編集H氏が一致したのがブレンド湯による展望野天風呂「望渓の湯」だ。深夜、木の樽でできたこの露天風呂につかっていると、聞こえてくるのは脇を流れる早川のせせらぎのみ。川面を渡ってくる風が何とも心地よく、空を見上げれば満天の星が降ってくるかのよう……。

 自分と大自然との一体感、そして大げさに言えば、自分と宇宙との一体感すら実感でき、幻想的でロマンチックなひと時を過ごせる。特に女性に喜ばれるのではないだろうか。

1300年前から続く伝統の源泉を使った「望渓の湯」

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