平成の二・二六事件!? sengoku38氏が語る「尖閣ビデオ」事件の真相(2/4 ページ)

» 2011年02月15日 10時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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海上保安庁での仕事

一色 おそらくみなさまは私のことをあまりご存じないと思いますので、最初に自分自身のことを話します。私は1967年、京都市で生まれました。15歳の時に船乗りを志し、そのための学校に入るために親元を離れました。そこは全部で5年半(の課程)で、最初の4年半は机上の勉強、最後の1年は帆船を含む練習船に乗って、1年間、国内外のいろんなところを回りました。学校を卒業してからも外国航路の商船に乗って、約5年間、世界各国を回りました。それから船を降り、サラリーマンなどを経て、約30歳で海上保安庁に入りました。

 私が行ってきた海上保安庁での仕事は一貫して船に乗るもので、警備救難業務に従事していました。仕事の内容はあまり詳しく言うと、また国家公務員法違反で捕まりそうなので(会場笑)、そこは伏せておきます。ここからはみなさまご存じだと思いますが、2010年12月に退職して、現在に至っています。

 みなさまの中にも、海上保安庁と海上自衛隊を混同されている方がいらっしゃるようです。先ほども「海上自衛隊の方ですか?」と聞かれて、「違います」と答えました。日本は国土は狭いのですが、領海や排他的経済水域(EEZ)を含めると、かなりの広さになります。これを守っているのが海上保安庁です。

 当然、国境警備隊という性格の仕事も兼ねています。現在、日本はいくつかの領土問題を抱えています。最近はそれに加えて、尖閣諸島にもそういう問題を作ろうという動きが出てきています。その(領土問題を作ろうとしている)国は、南シナ海で行ったような方法で、日本に侵略を開始したとも受け取れるような行動をしています。2010年9月に起こって、私が11月に流した(尖閣諸島沖の衝突事件の)ビデオを見ていただけると、その一端が少しは分かると思います。おおよそ私の考え得る限り、漁船がああいう感じで衝突するということは考えられないことでした。

海上保安庁公式Webサイト

国民が求めているのは真実の報道

一色 これからは私の個人的な考えを述べさせていただきます。今、21世紀という時代を迎えて、いわゆる国際紛争を武力で解決しようという動きを私は感じています。本当に「尖閣諸島が自国の領土である」と思うのであれば、「証拠などに基づいて言論で争うべきである」と私は考えています。

 世界は過去の反省から、国際司法裁判所など、武力によらない紛争の解決手段を考え出しました。それは過去において、「武力で解決しようとした結果が空しいものである」ということを、我々人類が十分に学んだからだと思います。私を含む多くの日本人は、国際紛争を平和的な方法で解決したいと思っています。

 しかしその半面、最近、日本周辺の諸外国の動きを見ていると、「力には力で対抗する」という考えを持つ人が増えてきたように感じています。現在の日本は、相手が話し合いで来れば、話し合いで応えるでしょう。反対に力で来れば、力で押し返そうとするかもしれません。私は個人的にそういう解決方法を望みませんが、これは相手次第です。「攻められれば守る」という、ただ単純な理屈です。

 そこで、みなさまにお願いがあります。もし、日本と他国との間に争いが起こった時、片方の言い分だけではなく、日本の言い分もぜひ聞いてください。なぜかと言うと、日本が長い方はご存じだと思いますが、日本には「自らのことを多く語らない」ということを美徳にする文化があります。それにより、過去にいろんな失敗をしたケースがあります。

 現在、日本において、みなさまのような海外メディアの注目度が高まっています。自国のニュースでも、海外のメディアを通じて情報を得ようとしている人が、最近多くなっています。それは信頼度の問題です。

 具体的な例を挙げると、2010年に日本各地で起こった(反中)デモに対する報道姿勢などを見ていると、我々国民は数ある選択肢の中から誰が本当の情報を流しているか、誰が流さずにいるかということに気付き始めています。それを見極めて、正しい情報のみを取捨選択すること(の重要性)に多くの人が気付き始めています。これは考えようによっては、海外メディアのみなさまにとっては大きなビジネスチャンスかもしれません(会場笑)。

 いずれにしろ、我々国民が求めているのは真実の報道です。あの事件に関しても、「なぜビデオが機密になっているのか」「誰の手によってあのビデオが公開されなかったのか」、そういうことをみんなが知りたがっています。もし、メディアがそれを明らかにすることができれば、恐らく日本国民から絶大な信頼を得ることになります。あの漁船の船長のインタビューでもとれれば、かなりの注目を集められると思います。

 最後になりますが、みなさまにもう1つだけお願いをしておきます。春になって、あの尖閣諸島で起きる出来事を、第三者の目で公平、客観的に全世界に向けて報道していただきたいと思います。

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