『地球の歩き方』の功と罪ちきりんの“社会派”で行こう!(1/2 ページ)

» 2011年02月14日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2009年7月10日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


『地球の歩き方』

 『地球の歩き方』という海外旅行ガイドブック。今は一般旅行者向けにも有用な本ですが、1979年に発行されてから当初の10年程度は“バックパッカーのバイブル”でした。確か表紙に「1日10ドル以内で旅する人のためのガイドブック」と書いてあったような記憶があります。

 日本円が圧倒的に強くなったのは1985年9月のプラザ合意からです。それまで1ドル240円程度だった円の価値は、この合意からの2年間で1ドル120円と価値が倍になりました。これにより普通の人にとっても海外旅行は一気に身近なものとなり、『地球の歩き方』も急速に成長しました。

 自分も昔はよく利用したこのガイドブックについて、ちきりんは“複雑な思い”があります。なので今日は「『地球の歩き方』の功罪」について書いてみます。

 功の部分は明確で、下記の2点です。

功(1) 自分で手配する個人旅行のスタイルを推奨し、普及させたこと

功(2) 実際の旅行者から情報を集めてガイドブックを編集したこと

 昔のジャルパックに代表されるように、旅行会社がすべてを事前に予約し、添乗員が日本から同行。ホテルから食事までプリセットされ、観光には専用バスが使われる――そういったパッケージ旅行とは異なる、「自分で旅程を組み立て、ホテルを予約し、現地の公共交通機関を使いながら旅行する」スタイルを紹介し、具体的なノウハウを掲載することで、初めて海外旅行をする日本人にも個人旅行を普及させた意義は非常に大きいと思います。

 また、旅行ガイドブックでは「掲載料を払ってくれたホテルやレストランを掲載する」という事実上の広告方式が一般的なのに、当時の『地球の歩き方』は「広告ではなく、実際に旅行した人から無料で情報を集める」ことで作られました。そのため、情報は時に不正確なものを含みながらも、いわゆる「広告情報誌」とは異なる消費者の正直な声で構成されたガイドブックだったのです。

 格別にお金持ちでもない日本人が、海外を自由に旅行しようというきっかけを作ったという点ですばらしいガイドブックだったと思います。

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