若者の内向き思考は本当!?――日本で働きますか、それとも地球で働きますか?郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2011年02月10日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷好文(ごうよしふみ)

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。他の連載は印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」、メルマガ「ビジスパ」で「ことばのデザイナーのマーケティングレシピ」。中小企業診断士。アンサー・コンサルティングLLPパートナー。ブログ「マーケティング・ブレイン」(コンサル業)、「cotoba」(執筆業)。Twitterアカウントは@Yoshifumi_Go


 新春早々に“ソニーショック”があった。それは「日本人枠」についてのこと。

 2011年1月20日付けの日本経済新聞に、「ソニー、新卒3割外国人」という見出しが踊った。記事によると、2013年までに新卒採用の3割を外国人にして日本人採用を縮小するという。

 いや、3割で驚くな。ユニクロでは2012年、つまり来年の新卒正社員の8割を外国人採用にするという。ローソンでもヤマト運輸でも、外国人採用の割合を増やす計画だ。野球やサッカー、駅伝などでは外国人枠が制限されているが、企業の雇用前線では日本人枠が制限されるようになってしまうのか。

 英語重視の流れも広がっている。武田薬品工業では2013年からの新卒採用はTOEICスコア730点以上を義務づける。大阪府の橋下徹知事は、TOEFL(高校生対象の英語検定)優秀校に予算を手厚く配分すると発言した。

 折りも折り、史上最低水準の大卒就職内定率(参照リンク)の中で縮小する日本人枠、英語NGでは門前払いの就職市場。なんとキビしい時代! 企業からは、若者たちが内向きで英語下手でガッツもないように見えるらしい。でも、本当にそうですか?

外国人シフトのオモテのワケ

 一流企業が外国人新卒採用にシフトするワケは3つある。

 成長のために、縮小する国内市場から海外市場に資源を振り向けたい。市場開拓の即戦力は「現地市場と日本語を知る外国人」、つまり留学生である。海外から日本への留学生は過去10年で倍増、2009年には大学院・大学・短大などで10万人が留学しており、3万人が卒業・修了する(日本学生支援機構調査)。高質な人材が潤沢にいるのだ。

留学生数の推移(クリックで拡大、出典:日本学生支援機構)

 2つ目は「日本人海外留学生の減少」。話題になった米国際教育研究所の「米国の大学・大学院の外国人留学生数調査」(2010年11月発表)によると、2009〜2010年の米国大学への留学生数の1位は中国人(12万7000人)、2位インド人、3位韓国人。一方、日本人は2万5000人で、前年比15%減と2年連続2ケタ減で6位に後退した。海外離れが進んだからだという。

 3つ目、意識の上でも「日本人が海外挑戦をしたがらない」。産業能率大学が3年おきに調べる「新入社員のグローバル意識調査(参照リンク)」の2010年調査では、「海外で働きたくない」人が49%と2人に1人だった。2001年調査と比較すると、海外志向の低い層は20ポイントも増加。「内向きなヤワな新卒ばかり」というわけだ。

新入社員のグローバル意識調査(出典:産業能率大学)

 現地市場を知る外国人の増加、海外留学の減少、海外志向の減退という事情が、日本人枠設定のワケのようだ。

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