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» 2011年02月09日 08時00分 UPDATE

それゆけ! カナモリさん:もう男だけの食べ物じゃない! 「ラーメン女子」を狙うワケ (1/2)

ラーメン店に女性客が増えているようだ。日本経済新聞は1月28日の記事で「ラーメン女子」と名付けている。「男の牙城」であったはずのラーメン店に「女子」を呼び込むのは、いかなる戦略なのだろうか。

[金森努,GLOBIS.JP]

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2011年2月4日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


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 国民食として定着した感のあるラーメン。新横浜ラーメン博物館のWebサイト「ラーメンの歴史」では、その歴史を5つに区分している。ラーメン夜明け前(〜1910年)、黎明期(1910〜1940年)、定着期(1940〜1958年)、発展期(1958〜1996年)、多様化期(1996〜)。年表を見ると、実に大きな進化を遂げてきたことがよく分かる。それぞれに、人生の思い出が重なり、うっすら感動すら覚えるほどだ。

 両親に連れられて行った「ハレ」としてのラーメン屋。流行り始めた豚骨ラーメンを学校帰りに山盛り食べたっけ、給料日前にいつもすすった「ラ王」……。今、振り返ってみると、改めて生活に密着した食であることに気付かされる。

 2011年1月11日付朝日新聞の記事「中華そば 『国民食』から『国際食』へ」によると、日本政府観光局の訪日外国人に対する「日本への期待度」調査はかつて、「ショッピング」が1位だったが、2008年に「日本の食事」がその座を奪った。10年前の外国人にとっての日本食の1〜3位はすし、天ぷら、刺し身の順だったが、2009年にラーメンがすしに次いで2位に「躍進」した。「麺文化」の伝統があるアジアの観光客に限ると、ラーメン(27%)がすし(34%)に迫り始めている。

 インスタント麺の世界的な普及も考えれば、そのインパクトはハンパじゃない。ついに、B級グルメの雄であるラーメンが、クールジャパンの顔として表舞台に立ち始め、今や、国民食どころか、「人類はラー麺類」状態になりつつあるのだ。

 さて、その存在感とは裏腹に、前掲の記事によると、市場規模は約4250億円で、回転ずし業界と同じぐらいの規模に過ぎない。外食産業全体が約24兆円だから、意外に少ないとも言えるかもしれない。

 限られたパイを巡って、個性を競い合う職人系の店に、チェーン展開する店が混ざり合い、「犬も歩けばラーメン屋に当たる」というほど乱立しているのが、現在の国内市場の動向と言える。

 今回は、そのラーメン店の話だ。

 以前「『釣女』『釣りガール』は本当に流行るのか」と題したコラムでも紹介したが、山に釣り場にと、昨今、いわゆる“男の世界”に進出する女性の勢いはすさまじい。2011年1月28日付日経経済新聞消費面に掲載された記事のタイトルは「『ラーメン女子』増殖中」。日経の記者も男の牙城にひしひしと迫り寄る脅威を感じての表現だろうか。

 記事では、「脂っこい」「ベタベタする」といった女性に敬遠されがちなイメージを払拭、具材に野菜をたっぷり使ったり、内装を明るいイメージにしたりと店作りを工夫して、女子が進出している店舗の特徴を挙げている。

 記事に出ているメニューは、「野菜たっぷりしょうがラーメン」。冷え性が多い女性に訴求するため、スープにしょうがを溶かし込んだという。そのおかげで店の女性客比率は40%に達しているらしい。

 どこのチェーンかと思って記事を読み進めて驚く。喜多方ラーメンの「坂内」など55店を運営する麺食とある。

 会津盆地の風土に育まれた多加水平打ち麺を特徴とする喜多方ラーメンの坂内といえば、肉々しくも「これでもか!」とばかりにてんこ盛りにされている焼き豚が特徴だ。まさに肉食獣の食べるラーメン。健康だの、栄養バランスだのとは無縁の男の世界である。

 それが「野菜たっぷり」である。なんという草食化……。そこには、我ら日本男児がラーメンどんぶりの中のスープ、ひとすすりの麺に人生を重ね合わせるような風情は感じられないではないか!!

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