社長の番犬“ポチ”に、苦しめられていませんか吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年02月04日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

 要は、安定して売り上げや利益を捻出する仕組みができ上がっていないのである。さらに社長があまりにも自己中心的な性格で、社員らに感情的な言動をとっていることが分かった。

 例えば、それぞれの社員の仕事に介入し、「なぜ、こうしないのか」とかき回す。ところが、それにしたがい、仕事を進め、息詰まると「なんとかしろ!」と責任を押し付ける。そこで社員が不満を言うと、「あいつは何様」「使えねえ」などと言って仕事を取り上げたり、ポジションを外したりして辞めるように仕向ける。

 だから、皆が怖がり、報告や連絡をしない。そして自分の仕事を抱え込む。社長はそれに怒り、またかき回し、放り出す。この悪循環なのだ。こうした状況を踏まえ、コンサルタントが試みたのが「価値観を共有し合うミューティング」だった。

 これは、社員らが社長の前で不満などを述べ合う会合である。互いに忌憚(きたん)のない意見を言い合うことで、不信感を取り除くことが狙いだ。例えば「会社のココが問題である」とか「報告をしなかったのは、こういった理由からだ」と辛辣(しんらつ)な内容になる可能性が高い。

 コンサルタントがこの手法を提案しても、クライアント企業によっては拒むことがあるようだ。その理由は、社長が吊るし上げられることを警戒するからだ。自分が組織の中心にいないと、不安を感じるタイプが多いのだという。このベンチャー企業の社長も当初はためらっていたが、なんとか受け入れた。

やらせのミューティング

 「価値観を共有し合うミューティング」を行ったものの、さっそく“やらせ”が起きた。参加したのは、正社員10人前後、非正社員のリーダー格6人ほど。コンサルタントの司会で進むのだが、これらの中に社長の言いなりになる“ポチ”が3人いた。話の流れが会社の批判になると、3人のうち、誰かが言い始める。

 「それは、〇〇さんにも問題がある」「〇〇さんがこうしておけば、そのようにはならなかった」――。

 〇〇さんとは、会社のことを、つまり、社長のマネジメントを批判する社員を意味する。社長が形勢不利になると、目で合図をする。すると、ポチたちは不満分子たちの発言を封じ込める。

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