NECとレノボの提携報道に見る、経済ニュースの“ガラパゴス化”相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年02月03日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

 詳細は割愛するが、「コモディティ化のピッチが極めて速い昨今のPC業界で、2社合わせて11%程度(IDC Japan調べ)の世界シェアでは、首位HPの追撃どころか、急速にシェアを高める3位エイサーの背中さえ見えてこない。ハナから勝負にならない」(外資系運用会社アナリスト)との厳しい見方が大勢だったのだ。

 お叱りを承知の上で言えば、この一面トップのニュース価値は、先のリード部分の最後にある「日中を代表する企業が連携し世界市場を本格的に開拓する初のケースになりそうだ」の部分だ。

 換言すれば、経済報道で定番となっている「〜〜進出するのは初めて」、「△◯が実現すれば、初めて」、つまり「初めて」の部分のみがニュースということになる。

「初」を強調するために

 ここからは筆者の完全な空想である。今回のスクープに当たり、仮に現場の担当記者が合弁交渉という事実をつかみ、これを淡々と記事にした。しかし、デスク、あるいは編集局幹部の意向で「日中の大手同士の本格合弁初のケース」という「初」を強調するため、合弁の中身を前向きなトーンにするような指示があったとしたらどうだろう。読者をミスリードしてしまうのではないだろうか。

 筆者は長年の記者生活を通じ、多数の日経記者と昵懇(じっこん)になった。彼らの口から、「経済、産業面トップ程度のネタを、無理矢理一面トップ用に加工させられた」と聞かされたことがある。今回のニュースがこうしたケースに該当するかどうかを判断する立場にないが、現場が得たファクトを、上層部が曲げたがるメディア界の体質を知るだけに、一抹の不安を覚えた次第だ。 

とりあえず“後追い”の弊害

 同紙報道のあと、他紙やテレビが合弁に関するニュースを続々伝えた。業界用語で言うところの“後追い”である。

 後追い記事のトーンは、おしなべて日経と同じく前向きな中身が多かった。筆者自身何度も経験があるが、日経が一面大見出しでスクープを出した際、取材現場は当然慌てるし、記者を仕切る側のデスク、編集幹部はもっと焦る。

 現場に対しては「とりあえず後追いせよ」の指示が下るのだが、先行した記事の内容の精査に主眼は置かれない傾向が強い。すなわち、1分でも早く同じようなトーンの記事を出すことが求められるのだ。

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