液体洗剤市場を奪えるか? P&G逆転の戦略それゆけ! カナモリさん(1/2 ページ)

» 2011年02月01日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2011年1月28日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


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 P&Gから濃縮液体洗剤の新製品「アリエールレボ イオンジェルコート」が発表された。発売は4月上旬。花王の「アタックNeo」、ライオンの「トップナノックス」とガチンコ勝負になる。しかし、その作戦は実は奇策であるといってもいいだろう。

 日本における衣料用洗剤のトレンドは、洗濯機の進化とともに近年大きく変貌を遂げた。経済産業省によると、衣料用洗剤のうち液体のシェアは2003年には15%(販売金額ベース)であったが、節水型のドラム式洗濯機の普及で2009年に入って40%へと上昇。そして、2010年1〜8月の累計ベースで液体洗剤がついに50%を超えた。

 2010年7月16日付日経MJの記事「衣料用液体洗剤――花王『Neo』、すすぎでアタック」によると、市場規模は、「花王によると、液体洗剤の市場規模(贈答用を除く)は2009年で約670億円。2008年比の伸び率は約25%にもなり、微減傾向にある粉末(約960億円)に迫っている」という。

 花王の連結売上高約1兆2000億円(2010年3月期)、ライオンの連結売上高約3200億円(2009年12月期)という数字から見ても、衣料用洗剤の市場規模は、それなりのインパクトを持つ大きさであることが分かる。その中で、液体が急上昇しているのだ。

 背景には、販売数量の伸びによって規模の経済が働き、従来よりも低価格化が進んだことも普及を促進したことがあると思われるが、現在は低価格品による価格競争ではなく機能競争となっている。

 主戦場は「濃縮液体洗剤」というカテゴリーだ。濃縮液体洗剤は従来の液体洗剤を高濃度に圧縮し、少量でも抜群の洗浄力を発揮する。繊維に残りにくく、すばやく泡切れするという特徴だ。それにより、従来すすぎを2回していた洗濯の仕方が、1回で済むようになったのである。

 市場の2強は花王の「アタックNeo」、ライオンの「トップナノックス」だ。前者は日経MJ2009年ヒット商品番付の前頭1枚目に選ばれ、後者はそれを追うように発売され、2010年に同じく前頭1枚目となった。

 カテゴリーの先行者である花王の「アタックNeo」は最大限その効用を訴求した。広告のキャッチコピーは「節水・節電・節時間」。すすぎ1回で水と電気の使用量を削減できる。水道代、電気代が低減できるため財布にもやさしいが、それ以上に、すすぎ1回分の10分間という時間が短縮でき、家事の負荷軽減が実現することを強調した。「機能的価値」と同時に、主婦の気持ちに訴えかける「情緒的価値」も訴求したのである。

 発売時期において後れを取ることになったライオンは、価値訴求の切り口を変えた。同様に「すすぎ1回」を訴求できる商品であったが、それよりも、花王のアタックNeoに勝るとも劣らぬという「洗浄力」を前面に出し、従来の洗剤では落としにくかったニオイの元となる皮脂汚れを繊維の中まで入り込んで落とすという機能的価値を強調した。

 大手3社の中では最後発となったP&Gは「アリエールレボ イオンジェルコート」でどう戦うのか。それは、同社のニュースリリースを見るとよく分かる。

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