どのように働けばいいのか? 事業部制という罠吉田典史の時事日想(1/4 ページ)

» 2011年01月21日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 就職活動の時期になると「大企業には、やりがいのある仕事はない」などと批判する人がいる。

 私の記憶のある限りでいえば、30年以上も前から言われている。だが、そのとらえ方は実態に基づかないと思う。なぜなら「やりがい」は、会社の規模で変わるものではないからだ。年相応の明確な考えがない人が働いたところで、どこの職場でも心は満たされないだろう。

 大企業への就職や転職を考えるならば、むしろ、ここ数年、急速に「中小企業化」していることを認識すべきではないだろうか。これが入社して早いうちにぶつかる“壁”だからだ。

大企業の中小企業化

 2年前、雑誌の取材でメーカーや商社、小売、流通などの大企業を12社ほど取材した。そのときに「ここまで浸透しているのか」と驚いたのが、事業部制だ。

 事業部制とは、社員が数千〜数万人いる大企業が数百人ごとの中小企業のようになっている経営組織である。大きな企業は、売り上げや利益、経費などの扱いが甘くなりがちだ。そこで、取り扱う商品や製品ごとに原則として独立採算の部署を設け、それぞれが利益管理などの面で責任をもって運営していくのが、事業部制である。

 例えば、ある商社は役員会の下に「金属」「メディア」「不動産」など、10の事業部があった。私は「メディア事業部」に案内をされた。そこの部員は250人ほどで、トップが本部長。脇を副本部長2人が固め、その下に6つの部があった。1つの部には40人ほどの社員がいて、部長の下に5人のグループリーダー(課長級)がいた。課長は、8人ほどの部下を持つ。このメディア事業部は、さながら1つの中小企業に見える。

 それぞれの事業部は売り上げや利益などの額をめぐり、ライバルになる。特に人事は激しい競争となり、ある担当者によると「各事業部が優秀な社員を手放さない」という。在籍期間が長い社員は、10年近くもいるそうだ。つまり、囲い込みである。

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