物価の優等生が皮肉な結果に……汚染された“ダイオキシン卵”松田雅央の時事日想(1/4 ページ)

» 2011年01月20日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 「毎日食べている卵がダイオキシンに汚染されているかもしれない!」――。新年早々、ショッキングなニュースがドイツ社会を揺るがしている。

 ドイツ北西部ニーダーザクセン州当局の発表(1月3日)によれば、ダイオキシンの混入した家畜肥料によりニワトリ、七面鳥、ブタなどが汚染され1000カ所の農場が緊急閉鎖された。これまで具体的な健康被害の報告はないものの、汚染経緯には不明な点が多く消費者と農家の不安は払拭(ふっしょく)されていない。

4700の農場が閉鎖

 2010年12月に実施されたニーダーザクセン州の検査で問題の家畜飼料からダイオキシンが検出され、まず同州と隣接するノルトラインウェストファーレン州の家畜が食肉処分された。2〜3カ月前から汚染農産物が市場に出回っていた可能性があるという。

 ダイオキシン混入の経路を見ると、まず北ドイツ・エムデンにあるペトロテック社(Petrotec AG)で油脂が製造された。ぺトロテック社は食用廃油からバイオディーゼルや油脂を製造し、工業用に販売している。

 その油脂をドイツのハーレス&イェンシュ社(Harles und Jentzsch)が購入して飼料生産用の油脂を製造し、ここに何らかの原因でダイオキシンが混入したと考えられる。製造された油脂からは許容値の70倍を越すダイオキシンが検出されたが、その経路はまだ解明されていない。

 汚染油脂およそ3000トンは国内25の飼料メーカーに販売され、ここから生産された飼料が農家に販売され汚染が拡大した。

 事件発覚からおよそ2週間経った現在、汚染被害はドイツ13州に広がり4700の農場が販売禁止の処置を受けている。ドイツ農家連盟(DBV)によると、販売禁止にともなう農家の被害額は1軒平均、1週間2〜3万ユーロ(220万〜330万円)に上るという。

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