コラム
» 2011年01月17日 08時00分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:ワークライフバランスについてのビミョーな違和感 (1/2)

ここ数年、ワークライフバランスという言葉を、メディアなどで目にする機会が増えているという人は多いでしょう。しかし、ちきりんさんはワークライフバランスの議論には“微妙な違和感”を覚えると主張、その理由とは……?

[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2009年4月22日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 しばらく前から“ワークライフバランス”という言葉をよく聞くようになりました。背景として、「現在の日本ではワーク(=仕事)に配分される時間が長すぎて、ライフ(=個人生活)への時間配分が少なすぎる」という問題意識があるのでしょう。

 ただワークライフバランスが語られる時、“微妙な違和感”を覚えることもよくあるので、それをまとめておきたいと思います

1.過重労働とワークライフバランスは別の話

 日本で労働者があまりにも過酷な労働環境下に置かれ、過労死やうつ病が増加していることが問題になっています。サービス残業やみなし管理職問題も、社員の忠誠心の範囲内とはとても言えないレベルのひどさです。残業代を払わない、有給休暇を取らせないといったことは違法行為であり、異常な労働時間を強いるのは時に人権問題でさえあります。労働法規違反は犯罪としてきちんと取り締まるべきです。

 ワークライフバランスとは“病気にならない程度に働く”ことではありません。カタカナの流行語を持ち出すまでもなく、まずは適法な労働環境を確保することが必要です。

2.“いいとこ取りの議論”は無意味

 ワークライフバランスの話はたいてい欧州との比較で語られます。フランスやドイツ、スウェーデンやイタリアといった欧州に住んだことがある人が、彼の地のワークライフバランスがいかにすばらしいかを強調します。

 一方、韓国ではひと昔前の日本のようなワーク偏重の傾向もまだ強いですが、日本人が注目するのは「いかにサムソン電子に国際競争力があるか」という側面ばかりです。米国のトップエリートも日本の経営者よりよほど大変な環境で働いているように思えますが、それらが取りざたされることも多くありません。

 技術革新やアイデアの独創性ではシリコンバレーにかなわないと嘆き、ワークライフバランスでは欧州に比べてあまりにも見劣りするとぼやき、成長可能性において中国やインドと比べものにならないと悲観する。そんな国際比較をすることに意味があるでしょうか。必要なことはまず、私たちが全体としてどんなタイプの社会を志向しているのかを考えることです。

 例えば欧州の多くの国では消費税は20%に近い水準です。これは徴税面でも「ワーク(仕事からの所得税)ではなく、ライフ(消費生活からの消費税)に重点をおいた税制」と言えます。一方、所得税や法人税の高い日本の税制は、今でも「ワークから付加価値が生まれる」という思想に基づいています。

 また、欧州ではベビーシッターや家事ヘルパー、介護職やサービス業など人手のかかる産業に、低賃金で働く移民が大量に流入しており、それによって社会のインフラコストが低く抑えられてきました。これも人々が、(残業時間など)ワークの時間を減らしても生活が維持できる理由の1つです。

 このように国のあり方というのは総合的な設計によって決まるものであって、“いいとこ取り”の議論には意味がないのです。

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