3Dブームは繰り返される! 起源は約170年前に……(2/2 ページ)

» 2011年01月10日 08時00分 公開
[草野恵子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム
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 さらに、会場では興味深い資料があった。通常のビューワーは1人で楽しむものだったが、その立体視体験を複数の人間で共有できるようにしたシステム「カイザー・パノラマ」の絵だ。

エキサイトイズム カイザー・パノラマ

 これは大きな円柱状のシステムで、それを取り囲むようにして一度に25人がビューワーを覗き込むことができ、ステレオカードを鑑賞することができるというもの。内部の写真が回転して次々と観客に画像を見せてくれるのだ。カイザー・パノラマは1880年代に180台も量産されてドイツ各地を巡回したというから、相当人気のある、最先端のエンタテインメントであったと推測できる。もちろん、映画館ができる前の話だ。

 本展では、3Dの歴史を振り返ると同時に、現代の最先端のテクノロジーを駆使した、3人の作家による新作の展示も行われている。中でも、映像作家・五島一浩氏による新作「時間双眼鏡」がおもしろい。2Dから3D、そしてそれが崩壊していくさまを、自分でダイヤルを操作して鑑賞することができるインスタレーション作品である。適度な視差でないと、立体感は視覚の限界を超えて崩壊していくということがよく分かる。

エキサイトイズム 五島一浩「時間双眼鏡」2010年

 1851年に開かれた世界最初の国際博覧会・第1回ロンドン万国博覧会で公開された最先端の立体視作品は、その万博の会場として建てられた鉄骨とガラスで作られた巨大な「クリスタル・パレス」をダゲレオタイプで撮影したものだった。会場には、この当時の作品とステレオスコープが展示されるとともに、21世紀版のCG立体作品として、津島岳央によるクリスタル・パレスの再現作品「ref LE ction x ref RA ction」も展示されている。

エキサイトイズム 津島岳央「ref LE ction x ref RA ction」2010年

 さらに、日本のメディアアーティストの草分け的存在である藤幡正樹氏による「Field-works」シリーズも展示されている。

エキサイトイズム

 「Field-works」は、世界各地で人々の活動とその場所を、GPSとビデオカメラを使って記録し、それらの記録データをコンピュータ上で再構築し、まったく新しいビデオアーカイブを創り出そうという試み。中でも「故郷とは? ジュネーヴにて/Landing Home in Geneva」という作品では、全方位カメラで撮影した映像がリボンのような筒状になって、移動する時間軸とともに真っ黒なスクリーン上に立ち現れる。

エキサイトイズム 「故郷とは? ジュネーヴにて/Landing Home in Geneva」藤幡正樹 2005年

 3Dの歴史と技術を振り返りながら、新たな表現方法までを紹介する展覧会、2月13日まで。

映像をめぐる冒険vol.3 3Dヴィジョンズ 新たな表現を求めて

東京都写真美術館 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内

開催中〜2月13日(日)Open.10:00〜18:00(木、金は20:00まで)

休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)


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