コラム
» 2011年01月07日 08時00分 UPDATE

吉田典史の時事日想:あなたの職場は大丈夫か 自分を責めて死を選んではいけない (2/3)

[吉田典史,Business Media 誠]

深刻な社会問題になっている自殺

 4年後の2010年12月、過労死問題に関わってきた弁護士25人ほどとともに「自死遺族支援弁護団」を発足させた。自殺した人の遺族が賃貸マンションを管理する会社やホテル、鉄道会社などから多額の損害賠償を受けることがある。その遺族からの相談を受けたり、職場のストレスが原因で自殺したと思われる場合には労災申請、その他相続についてのアドバイスを行うなど総合的な支援をしていくという。

 いまや、自殺は深刻な社会問題となりつつある。警察庁によると、1カ月間の自殺者は2400〜2900人台で推移し、2010年は年間3万人を超えた。3万人を超えるのは、これで13年連続。死に至る原因・動機は、失業や生活苦が急増している。その一方で、「うつ病」が動機判明者の約3割に上っている。政府は2009年に自殺対策緊急戦略チームを発足し、自殺防止策を強化しつつあるが、状況は改善されていない。

“死人に口なし”

 和泉さんらが最近、受けた相談は次のようなものだった。大企業に勤務する男性がビルの屋上から飛び降りて自殺した。この数年間、営業ノルマを達成できなかったという。上司は、それを強くとがめた。男性は会社に行かなくなり、家にも帰らなくなった。その後、いったんは戻り、「明日からは会社に行く」と家族に話していた。ところが、翌日、死んでしまった。

 和泉さんが遺族から話を聞くと、労災申請に際して気になることがあった。男性は数百万円の借金をし、金融商品を購入していたという。「投資経験のないサラリーマンが、突然数百万の借金をしてFXをやること自体、不自然。遺族の話を聞く限り、なんらかの精神疾患を患っていた可能性がある。会社で叱責(しっせき)を受けていたことと何か関係があるのではないかと思う」

 会社の態度は、およそ誠実とはいえないようだ。懸命に働いていた社員が死んだにも関わらず……。和泉さんが上司からの叱責の状況を知ろうとしても、さまざまな理由をつけて対応をしない。同僚らは、自殺した男性や遺族を支援する行動をとらない。本来、経営陣に真相の解明を求めるべき企業内組合も頼りにならないという。もはや、“死人に口なし”の状況なのである。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -

Digital Business Days

- PR -