採用から給料、メンタルヘルスまで――2010年の企業人事を振り返る(2/2 ページ)

» 2011年01月07日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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メンタルヘルス不全への対策に注目集まる

 労務管理では、残業時間に焦点が当たりました。企業が自らワークライフバランスや職場環境の改善といった理由で時短に取り組んだというよりは、労基署のチェックが厳しくなったこと、退職者からの残業代の不払い請求に弁護士達が(消費者金融への過払い請求がそろそろ一巡したので)新規事業として乗り出しそうだという噂がかなり広まったことが大きいようです。特に、後者の弁護士の新規事業というのは、来年は本気で弁護士会がたきつけるという話もまことしやかに流れています。

 もう1つ、労務管理ではメンタルヘルス不全への対策がますます普及しつつあります。メンタルヘルス不全者が現実に出た会社もあれば、近いうちに定期健康診断の必須項目にするという厚労省の方針があるので、それに沿ってという会社もありますし、リスクマネジメントの一環としてといった会社など、そのスタンスはさまざまですが、いずれにしても今後ますます注目の分野になっていくことは間違いないところです。

 一点の懸念は、厚労省が定期健康診断の必須項目にするのは良いと思うのですが、医者が問診時にちょっと聞くだけとか、メタボ検診の時のような医者のもうけにつながることだけを考えたような基準を設定するとか、そのような取り組みは避けていただきたいと思います。

 人材育成・教育研修では、「定額制」の社員研修がいくつも登場しました。スポーツクラブなどと企業が法人契約を結んで、従業員がこれを利用できるような仕組みと同じで、月々定額の会費を企業として支払えば、セミナーや研修を従業員が自由に受けることができるサービスです。

 この不況で社員研修に費用を割けない会社に対してアプローチしやすい仕組みですが、どの程度、浸透していくかは来年の注目と言えます。不景気とはいえ、研修にかける費用はそんなに減っていないという調査もあり、若手対象や管理職対象など定番の研修を含めて全体に堅調であろうと予測します。そのほか、メンタルヘルス系の研修、外国人留学生など文化を相互に理解するための研修が増えていきそうな感じがあります。

 そのほか、組織活性化などでは、「モチベーションが大切だ!」「クレドだ、企業理念だ」といった、時々起こるブームらしきものはなかったように感じます。組織というものは、そんな1つの切り口から単発で何かをやったからといってすぐに変わるようなものではない、という当然のことがしっかり理解されるようになってきたからでしょうか。

 ただし、変わった施策を実施している会社の事例や、カリスマ経営者がやってきた活性化策などが書かれている本が売れているようでもありますので、制度改革や労務管理といった手をつければ結構な時間とパワーがかかることではなく、ある意味で手軽に実行できる策を探している会社も多いのでしょう。人件費・採用費・研修費といった厳しく管理せざるを得ない分野以外のこと、工夫だけで変われる可能性があるのなら、それに注目が集まるのは当然で、今後もこの類の情報への関心が高まると考えられます。(川口雅裕)

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