湯浅誠が語る、広がる貧困と結婚できない人の関係(2/4 ページ)

» 2010年12月22日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

結婚しない人が増えている

 なぜ日本で、結婚しない人が増えてきているのだろうか。会社を見てみると、非正規雇用者がどんどん増えていて、その非正規雇用者の増加に引きずられるようにして正規雇用者の低賃金化が進んでいる。こうした現実があるのにもかかわらず、男性は「自分は男だから、一家全員を養わなければいけない。しかし給与が少ない。自分は“甲斐性なし”だから、結婚できない」と結論付けてしまう。

 一方の女性も「出産を機に会社を辞めなければいけない。それでも生活をしていかなければいけないので、夫には安定した収入がなければいけない」と思っている。

 もちろん、結婚していない人の全員が「経済的な理由で結婚できていない」というわけではない。さまざまな理由によって、結婚できない人がいる。しかし未婚率を雇用別で見てみると、正規雇用者よりも、非正規雇用者の方が高い。あるデータによると、正規雇用者に比べ、非正規雇用者は3分の1ほどしか結婚していない。

未婚率が上昇している(出典:総務省統計局)

強いられた同居

 安定した仕事がなかったり、仕事をしていても月収20万円以下といった低収入であれば、1人暮らしをすることも難しい。金銭的な理由で1人暮らしができないため、親と一緒に暮らす30〜40代の人たちが増えている。もう「子ども」とはいえない大人と、その親が一緒に暮らさざるを得ない――そうした家族が増えていることも問題だろう。

 30〜40代の人たちの家族といえば、どんな家族像をイメージするだろうか。夫または奥さんがいて、子どもが1〜2人……と想像するかもしれないが、そうではない人がたくさんいる。もちろん親と一緒に暮らすメリットはあるが、その一方で“家を出たくても出られない”現実がある。極端な言い方をすれば「強いられた同居」といえるだろう。親と一緒に暮らしたいのではなくて、家を出られないから一緒に暮らしている。こうした30〜40代が、今後も増えていくのではないだろうか。

 また「家族の中にしか自分の居場所がない」という人がいる。しかしそれは“縁”の乏しさを示しているのではないだろうか。いろんな縁があれば、家族に支えられなくなっても、その人が孤立することはない。もし家族の縁が切れてしまうと、その人は“無縁”になるかもしれない。そうして、今、社会問題にもなっている“無縁社会”(単身世帯が増えて、人と人との関係が希薄となりつつある社会)が広がっていくかもしれないのだ。

 無縁にならないためにも、家族だけではなく、さまざまな「縁がある」状態にしなければいけない。たくさんの縁があれば、家の中で煮詰まってしまっても、そこから逃げ出すことができるから。しかし今の日本は、家を出たくても出られない人たちがどんどん増えている。なぜこうした人たちが増えているかといえば、貧困問題と無縁社会の問題が根っこの部分で、つながっているからだ。

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