「顧客への共感を育てる」という点では、米国のオフィス用品流通では最大のステープルズという会社が、かなり前から先進的な試みをやってきました。前述の著書『売れる仕組みに革命が起きる』の中に詳しく書いていますが、この会社では、ボストン郊外にある本社で月4回程度、有志社員が大講堂に集い、コンタクトセンターに入ってくるコールを1時間ライブで傍聴する、ということをやっています。
本社で働いている人間なら、所属部門や役職に関わらず誰でも参加できるのですが、これにはCEOなどトップの人間も頻繁に参加しているということです。顧客を「ナンバー(頭数とか売り上げ)」としてではなく、「個々の人間」として扱う。顧客の声を生で聴くことによって、顧客の怒りやフラストレーション、あるいは喜びを直に経験するのだそうです。
これは、莫大な資金投資や大掛かりなシステム導入を必要とすることではありません。「お客さまを徹底的に理解する」という意思と姿勢と創造性さえあれば、どんな企業にもできることです。
Facebookの話からは大分それましたが、ソーシャルの時代にあって、テクノロジーだけにこだわったり、テクノロジーを障壁と考えるのではなく、ソーシャルという言葉の原点にかえって、生活者主体のビジネス構想や価値創造を考えていく必要があると思うのです。そういった意味では、2011年は生活者とつながる企業とそうでない企業との間に大きな格差が生まれる年になるのではないかと思っています。(石塚しのぶ)
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