米『TIME』の“時の人”はFacebookのマーク・ザッカーバーグCEO(2/3 ページ)

» 2010年12月22日 08時00分 公開
[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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2010年は「ソーシャル時代元年」

 2010年は「ソーシャル時代元年」とでも呼ぶべき年でした。Facebookなど、Web上のソーシャル・テクノロジーの影響で、生活者の情報伝播力、発言力、影響力、そして組織力が目まぐるしく増大した結果、生活のあらゆる側面でソーシャル化という現象が起こってきました。

 私は2011年にはこのソーシャル化がますます加速するのではないかと思っています。その結果、流通業を始めとした企業は、ソーシャル化に伴う生活者の行動変化や要望に応えざるを得なくなると思います。

 でも、誰もが「Facebook」にならなくてはならない、ということではありません。ソーシャル・テクノロジーを導入して……というだけの問題ではなくて、ソーシャル時代にふさわしい企業のあり方、考え方というのが、今、問われているということだと思うのです。「ソーシャル」と言われると、すぐにテクノロジーの話だと思って尻込みしてしまう流通業の人たちは、特にこれを自覚する必要があると思います。

 ソーシャル時代にふさわしい考え方とはどういう考え方かというと、例えば、「組織化された顧客」、つまり生活者の力の膨大さを認識することだと思います。「顧客エクスペリエンス」とはもはや、企業の力だけで形作るものではありません。

 FacebookやTwitterや、あるいはAmazon.comなどを見ても分かりますが、今日、生活者は自分と同じ立場にある生活者が提供する情報やアドバイスにより大きく依存する傾向にあります。専門家や売り手が提供する商品レビューより、生活者が提供する商品レビューの方が信用できる。あるいは、コールセンターに電話したり、企業のFAQを見るより、顧客フォーラムに行った方がより詳細な情報がより速く得られる……などといった声がよく聞かれます。

 「企業が提供するエクスペリエンスより、顧客同士が提供するエクスペリエンスの方が優れている」といったことが多々あるのです。企業は、このような顧客パワーを認識するべきですし、それに応える仕組みを作ることに注力すべきだと思います。

 そして企業のあり方としては、顧客についてより深く知る姿勢が求められていると思います。それも、常に顧客の声を聞いている姿勢が求められているということです。何か特別なイベントとして顧客の声を聞く場を設けるのではない。むしろ、オン/オフライン含めてあらゆる方法を駆使し、顧客の声をいつも聞き続ける体制を持つ、ということだと思います。それも、今までの倍どころか、何十倍もということです。

 さらにVOC(ボイス・オブ・カスタマー)といっても、ただ単に顧客の声を集計して定量化すればよいというものではありません。顧客エクスペリエンスというのは、煮詰めれば「感情」。ザッポスのトニー・シェイCEOも言っているように、お客さんにとっては「どんな気持ちにさせてくれたか」が重要なのです。だから、ただデータをとっておしまいということではなくて、お客さんの感情に触れて、シンパシー(共感する気持ち)や姿勢を養うことが必要です。企業人としての自分ではなく、生活者としての自分に立ち返るということです。

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