インタビュー
» 2010年12月17日 08時00分 UPDATE

嶋田淑之の「リーダーは眠らない」:西川産業の若き社長は、創業444年の老舗をどう率いているのか (1/5)

今年で創業444年を迎える寝具メーカーの西川産業。江戸時代から続く老舗の指揮をとっているのが、まだ43歳の西川八一行社長である。老舗を率いるに当たって西川八一行社長は、経営理念がベテラン社員たちを説得する上でのキーポイントになったのだと語る。

[嶋田淑之,Business Media 誠]

嶋田淑之の「リーダーは眠らない」とは?

 技術革新のスピードが上がり、経済のグローバル化も進む中、日夜、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き、どんなことに注目して、事業を運営しているのでしょうか。「リーダーは眠らない」では、さまざまな企業や団体のトップに登場していただき、業界の“今”を語ってもらいます。

 インタビュアーは戦略経営に詳しい嶋田淑之氏。徹底した聞き取りを通して、リーダーの心の内に鋭く迫ります。


 戦後の廃墟から立ち上がり、豊かさを求めてひたすら働き続けた日本人。「惰眠を貪る」という表現に現われているように、睡眠はムダなもの、非生産的なものと思われがちだった。

 毎日、他人より1時間でも、いや1分でも長く働く人が賞賛され、日々の会話の中でも、「睡眠時間を削って頑張る」「本当に疲れていれば、どんな環境でも1分以内に熟睡できる」といったフレーズが頻繁に飛び交った。睡眠をめぐる、こうした価値観は、今なお、多くのビジネスパーソンの心の中にあるに違いない。

 しかし、「仕事のパフォーマンスは睡眠の質で決まる」ことを知ったならば、果たしてこのような価値観を堅持できるだろうか? 私自身、認識不足だったのだが、睡眠の質の優劣こそが、その人の知力や感情の安定、行動力、態度、表情、存在感、持久力など、ビジネスライフのあらゆる要素に影響を及ぼし、仕事のパフォーマンス・レベルを規定することが今や明らかにされているようなのである。仕事だけではない。現代病と言われる病気の数々もまた、睡眠の質の優劣と深い関係があるという。

 それを教えてくれたのが、今回の主役・西川八一行(にしかわ・やすゆき)さん(43歳)だ。今年で創業444周年を迎える老舗企業、西川産業の若き社長である。

ah_nisi1.jpg 西川産業の西川八一行社長

「西川産業のアイデンティティは“寝具メーカー”ではありません」

 「西川のムアツふとん」を初め、数々のテレビCMでもお馴染みの西川産業。寝具のトップメーカーだと思いがちだ。しかし、同社のアイデンティティを尋ねると、西川さんはそれをきっぱりと否定した。

 「弊社のアイデンティティをキーワードで表わすならば、いわゆる“寝具メーカー”ではありません。“お客さまの、よりステキな明日を作ること”こそがアイデンティティなのです。

 現在は快適な睡眠を通じて、あるいは快適な住環境を通じて、お客さまに元気な明日、ステキな明日をご提供していますが、それは現業がそうだからということであって、今後もずっと睡眠だけを売る会社かと言えば、決してそのようなことはありません」

 それならば例えば、スポーツ関連や、化粧品などにも進出していく可能性があるということだろうか?

 「そうした分野との親和性は非常に高いと考えています。実際すでに、睡眠がスポーツのパフォーマンスにおよぼす影響を研究し、パフォーマンスを高めるための技術開発、商品開発を行い、アスリートの方々に使っていただいています。このような形で、スポーツ分野への進出はすでに始まっています。スポーツ以外でも、例えば睡眠の質が美容に及ぼす効果などに関しても同様に研究を進めています」

ah_nisi2.jpg スポーツにおける睡眠の研究では、三層特殊立体構造による「エアー」(マットレス、枕、クッションなど)として結実。体圧分散・寝姿勢保持・吸透湿性・放湿性・保温性の5つの条件を満たしたアスリート仕様になっているという

 老舗の布団屋という印象があった西川産業。しかし、その素顔は、睡眠や住環境を1つの切り口にしつつも、最先端の科学的研究をベースに、より広く、さまざまな分野のプロフェッショナルな方々の仕事のパフォーマンスを高め、あるいは人々のクオリティ・オブ・ライフを高めていくことを志向しているようだ。

 そして、こうした先進性こそが、江戸時代に創業して以来、同社の経営を特徴付けてきたファクターなのである。

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