カネを返せなくなった……この人は本当に“弱者”なのかちきりん×磯崎哲也のマジメにおちゃらける(5)(2/3 ページ)

» 2010年12月17日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
ブロガーのちきりんさん

ちきりん:銀行はその情報を見ることができなかったわけですよね。

磯崎:そうです。「Aさんは○○社で○○万円借りている」という情報は、顧客情報そのものなんですよ。借りた人の氏名、生年月日などのデータが詰まっている。しかし優良な顧客データだと、他社に取られてしまうかもしれない。そうしたリスクを抱えつつ、各社は情報を出し合っていた。

ちきりん:このシステムに銀行が入ってしまうと、銀行にいい顧客を奪われてしまうわけですね。

磯崎:銀行に「ウチの方が金利がはるかに安いですよ」と営業をかけられたらひとたまりもないと考えるのは当然だったでしょうね。その顧客情報は、もともと消費者金融業界の大切な資産なわけですから、それを守ろうとするのは、まあ当然ではあります。一方、米国では信用情報サービスが業態を超えて顧客の信用情報を補足している。しかし日本では市場が分断されていた。

ちきりん:なるほど。それと、信用情報に関していえば、日本では“お金に関する自分の信用力”を自分で管理する、という考えが教えられていませんよね。

 自営業の人で経費をつみあげて、税金を支払わなくてすむようにしているような人が、家を買いたいと思ったときに、住宅ローンを申し込んでもお金を借りることができなくて驚くケースがあるんです。前年までのその人の収入があまりに低いから住宅ローン担当者は「これだとお金を貸すことができません」と言うわけです。それを聞いて、収入というのは税金のためだけの数字ではなく、“自分の経済的な信用力にかかわる”んだということをこのタイミングで初めて知るわけですよ。

 なぜこうした人がいるかというと、日本がお金に関する教育を怠ってきたからだと思います。そのツケが、いま出てきているんですよ。お金を貸す産業を育成しながら、同時にお金に対する教育をするべきだった。そして弱者は守るという施策をとるべきだった。しかしこの国はどれも十分にやってこなかったですよね。

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