未来の姿を描くことで、ギフト市場を活性化させよう郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2010年12月16日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

ギフト・ターゲティングは死滅した

 ギフトには贈る人がいて贈られる人がいる。この対応関係には従来“ギフトガイドライン”とも言うべき習慣ないし公式が存在した。人によって状況は多少異なるだろうが、大まかには以下のように分類できる。

  • 儀礼ギフト……中元、歳暮、披露宴の引き出物、法人新設、退職、葬儀など
  • 個人ギフト……お正月、お年玉、新入学、誕生日、婚約、結婚など

 バブル崩壊以降、儀礼ギフト習慣が縮小し、ギフトショップが閉まり、百貨店も売り上げを失った。贈答習慣というガイドラインが死滅して、代わりに大きくなったのがパーソナルギフト。カジュアルで個性的な「あなたのために」というオンリーギフトや、「自分ご褒美」へと飛び火した。祖母が孫のために『モンスターハンター』の行列に並ぶという、「孫は怪物」現象を誰も不思議に思わなくなった。

 マーケティング的に言えばターゲット層が設定しずらくなり、ありきたりの策ではギフト需要は喚起できなくなったということ。そこでどうするか? ギフト消費者を誘う手法の1つは「未来シーンを描くこと」だ。

未来シーン=期待心理を解く

 商品陳列のPOPに「贈り物に好適品」などと無意味な文を書かず、「贈られる人が何をしたいのか」「それを贈る人が想像できること」を書きこもう。例えば、定年退職する夫が、料理に興味を持っているとしよう。妻は「退職祝いは料理用品だ」と考えていた時、包丁セットの陳列の前でこんなPOPフレーズを読む。

 「うまさを逃さず3枚に下ろすなら、この包丁セットしかありません」

 POPには、なぜこの包丁で下ろすとうまいのかが切々と書いてある。喜々として料理する男性の声も載っている。手入れすれば永年物というのもひかれる。「これだ」と心が動かされてくる。さらに包丁セットの脇には通販カタログがある。こう書かれている。

 「冬の定置網の冷たさを想像できますか? ドン冷えの中での漁、それが新鮮な味の秘けつです」

 定置網漁の会員制通販である。季節ごとに旬の魚を穫れた分だけ送ってくれる。料理しがいのあるナマギフトだ。「これしかないわ」と購入する妻。かくして夫は喜々として料理するようになり、妻は無料の料理人を雇えることとなる。贈る人と贈られる人、それぞれの期待心理を洞察して文にするのがコツだ。次はプレゼントの“4P”でさらに分析しよう。

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