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» 2010年12月16日 08時00分 UPDATE

菅野たけしのウォッチWatch:あなたは音叉時計を知っていますか? (1/2)

Accuracy(精密)とElectron(電子)を組み合わせた「アキュトロン」の名前で発表された音叉時計。時代の流れと技術革新をうまく取り込むブローバの歴史をひも解いてみましょう。

[菅野たけし,Business Media 誠]

宇宙を感じられる音叉時計、ブローバ「アキュトロン」

ウォッチWatch 世界初の音叉式腕時計「アキュトロン」発表(1960年)

 半世紀前、時計の歴史を塗り替えた画期的なシステムを搭載した「音叉時計」が発表されたのを知っていますか。Accuracy(精密)とElectron(電子)を組み合わせた「アキュトロン」の名前で発表された音叉時計。これは、クオーツ時計が誕生する以前の1960年10月に、マックス・ヘッツェル(Max Hetzel)によって開発されました。彼は、スイスのバーゼルに生まれ1948年にビエンヌのブローバに入社した発明家です。

 機械式時計にみられるぜんまいやてんぷの代わりに、チューニングフォーク(音叉)、水銀電池、電磁コイル、トランジスタ回路で駆動する、世界初のシステムを搭載した画期的な時計です。

ウォッチWatch 時計内部にセットされた360振動/秒の小型音叉装置

 駆動のシステムを簡単に説明すると、時計内部のコイルに電圧をかけ、音叉から発生する正確な共鳴振動(360振動/秒)によってインデックス車を回転させ運針する仕組みになります。

 初代ムーブメントのCal.214に使われたインデックス車は直径2.4ミリ、厚さ0.04ミリ。この小さな部品に320もの歯を切るという精密な加工が施されています。ハイビートの機械式時計が1秒当たり8〜10振動であるのに対し、音叉時計は360振動の高振動を生みだし、日差2秒という当時としては驚愕(きょうがく)の高精度を実現しました。

ウォッチWatch アポロ11号によって月面に設置されたアキュトロンの計時装置(1969年)

 機械式時計に耳を付けるとカチカチと聞こえますが、アキュトロンの場合はキィーンという電子音に似た連続音が聞こえてきます。また、あまり知られていませんが、アキュトロンはNASAが実施した46回におよぶ宇宙飛行に使用されました。

 1969年7月20日には、地球へのデータ送信をコントロールする計時装置「アキュトロン・タイマー」が宇宙飛行士のニール・アームストロングとバズ・オルドリンによって月面に設置されています。

音叉機構が見えるスケルトン仕様の「スペースビュー」

ウォッチWatch アキュトロン「スペースビュー」(1964年)

 アキュトロンシリーズの中でも人気が高いのがスペースビュー。音叉機構が手に取るように分かるスケルトン仕様です。

 ケースデザインはラウンドタイプだけでなく、左右非対称のものやユニークケースなどが作られました。ケース素材も金無垢からステンレススチールまで豊富なバリエーションを誇ります。

 右写真の時計は1964年製。裏ぶたに製造番号が刻印されており、この時計にはM4と刻印されています。「M」が1960年代を表し、次の数字が西暦の1けたを表すので1964年製造だと分かります。

 初期のアキュトロンに使われたムーブメントCal.214系の特徴に、いわゆるりゅうずというものが存在しないことが挙げられます。これは、時間修正が必要ないほど正確な時計であることをアピールするためでした。

 時刻調整は、ケース裏にある折りたたみ式のリングのつまみを起こし、それを回して行います。そのため、デザイン的にもスッキリ。後年登場したCal.218の時代になって、一般的なりゅうずが装着されました。

ウォッチWatchウォッチWatch 裏ぶたに設けられた電池収納スペース(上)とりゅうずの役目を果たす調整リング(下)。時刻調整はリングのつまみを起こして行います

アキュトロン誕生50年を記念、待望の復刻モデル登場!

ウォッチWatch Spaceview Alpha

 アキュトロン誕生50周年を記念した、「アキュトロン・スペースビュー」の限定復刻モデルが発売されることになりました。2010年のバーゼルワールド(時計見本市)で復刻モデルが出るという情報が流れて以来、世界中のアキュトロンファンが待ち望んでいた「Spaceview Alpha(スペースビュー・アルファ)」です。

 復刻モデルの生産には、実際の製品をバラバラに分解して、ブローバに残る設計図や資料などを基に、1からすべてを作り上げたそうです。その甲斐もあって音叉ムーブメント、スケルトン文字盤など、細部に至るまで忠実に再現されました。

 初代モデルと異なるのはケースサイズで、1964年製スペースビューと比べて約9ミリほどサイズアップしています。最新の腕時計トレンドを意識した、この復刻モデルのケースサイズは、いまのファッションに調和するボリューム感ある、カッコいい仕上がりを見せています。

ウォッチWatch Cal.214同様に裏ぶたに設けられた電池収納スペース(右下)とりゅうずの役目を果たす調整リング(左上)。50周年記念と限定モデルの証であるシリアルナンバーが刻印されています

ステンレススティールケース、カーブドサファイアガラス、4本ネジ止め式裏ぶた、蓄光仕上げの針とインデックス、30メートル防水。ケース径42ミリ、認定シリアルナンバー付き。世界1000本生産、39万9000円。

問い合せ先:ブローバ ジャパン 03-5408-1390
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