株式会社パトス代表取締役。
「エシカル消費」という言葉を耳にするようになってきた。
「エシカル(ethical)」とは、「倫理的」「道徳的」という意味だが、エシカル消費となると「倫理的に正しい消費」ということになる。エシカル消費の厳密な定義は専門家に任せるとして、広い意味でとらえれば、カーボンオフセットやリサイクルなど地球環境保全に役立つ商品、貧困国の不平等さを改善するようなフェアトレード商品、また、途上国への寄付や支援付の商品など、倫理的、道義的に正しいことが含まれている商品を購入する、あるいは消費することとなる。
つまり、このエシカル消費はデフレ商品と真逆コンセプトの商品であり、消費スタイルと言えるのだが、果たして冷え切ってしまった消費活動を刺激するような大きなムーブメントになるのだろうか。
日本ではまだまだなじみがないが、英国あたりでは数年前からかなりの取り上げられ方をされていたらしい。
幸い、ロハスのような明らかな(バズ的な)マーケティング用語としての概念ではなく、人が持つ本質的な部分を表す概念だけに、しっかりと根付く可能性は十分にある。ロハスやエコロジーが地球や環境という直接的なレスポンスが難しいコンセプトであったのに対し、エシカル消費は、明快で分かりやすいコンセプトで、直接的な効果も分かりやすい。そして何よりも商品や消費に「大義」が存在する。
そして、このところの消費行動との関連がある。昨今のマーケティングの主軸になっている、商品の持つストーリー、物語を重視する流れに加え、マイケル・サンデル教授が巻き起こした「正義ブーム」(?)も拍車をかけている。
また、商品・サービスの提供側にしても、堂々とCSRをビジネスに結び付けることができる。ここにきてどちらかと言うとコストセンターとしてとらえられ、しかも不景気の影響によってしぼみ、担当者も社内で小さくなってしまっていたCSRの動きを、堂々とベネフィットセンターとして行うことができる。しかもブランディング効果もある。
実際に企業も明らかな「エシカル的」商品を打ち出してきている。代表的なものは、ブルガリの「ブルガリ セーブ・ザ・チルドレン リング」だろう。内側に、赤いセーブ・ザ・チルドレンのロゴが彫られ、全国のブルガリショップとオンラインショップ(米国と日本のみで展開)で販売中だ。販売価格の4万4100円のうち、8400円が寄付される。また、この商品以外にも、チャリティイベントなどを通して、740万ドルを募ることを目指している。
日本コカ・コーラとローソンは、缶コーヒー「ジョージア グリーンプラネット」を約300万本発売している。この缶コーヒーは、CO2排出量の削減に貢献する商品として、両社が費用を負担している。消費者が缶コーヒー1本購入することで、500グラムのCO2排出量の削減に貢献できる仕組みだという。
松屋銀座では、クリスマスケーキの販売と同時に銀座産の蜜ろうを使用したキャンドルを限定100台、チャリティ販売を行う。このキャンドルの売り上げの一部はNGO「ルーム・トゥ・リード」を通じて途上国に寄付される。
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