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» 2010年12月14日 08時00分 UPDATE

日本企業がグローバル超競争で勝ち抜くために必要なこと――A.T.カーニー梅澤高明日本代表 (1/9)

日本は海外から「新興衰退国」と揶揄されるまでに落ちてしまった――。経済学者やジャーナリストが語る、「人口減社会にあっても、豊かさは失わず、所得再分配によって格差も解消する」という青写真は、成長なくしては崩壊する。このままでは日本は、「惨めな縮小」と語る、A.T.カーニー日本代表の梅澤高明氏。トップコンサルタントが説く世界の今、日本の未来とは何か。

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 「戦略コンサルタント」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。企業の参謀役、学生の人気就職先……。時に伝統的な日本企業とは相いれない「頭でっかちな存在」として否定的に語られることもあるが、今や企業だけでなく、政府のシンクタンク役として、日本経済の行方、いや、日本そのものを動かしている。

 ここに、憂国のコンサルタントがいる。経営コンサルティング会社A.T.カーニー日本代表を務める梅澤高明氏。自身を「国粋主義者」と表現するほど日本への強い愛着を持つ。日産自動車勤務、名門MITのビジネススクールを経て、A.T. カーニーの米国オフィスで経験を重ねた。だが、「日本企業が世界に打って出るチャンスを手伝いたい」との想いから、帰国を決意。以来、数多くの企業の再生、グローバル化をサポートしてきた。

 梅澤氏は語る。「欧州のメディアでここ1年、日本を表現するにあたって、『新興衰退国』なる言葉が使われています。日本は海外からそんな風に揶揄(やゆ)されるところまで来てしまった……」。統合の進む世界市場で勝ち残るべく、世界の企業が国境を越えて、合併や業界再編を繰り返している間に、日本は国内市場のシェア争いばかりに汲々(きゅうきゅう)とし、いつの間にか取り残されてしまっている……。

 中途半端に国内市場が大きいがゆえに、短視眼的、近視眼的に陥っている日本企業が、本当にグローバル超競争を勝ち抜くためにはどのような方策をとればよいのか。

 梅澤氏がグローバル超競争のリアリティーを語りながら、その方策を探る。

梅澤高明という平成の志士の想い

ah_ume1.jpg A.T.カーニー日本代表の梅澤高明氏

梅澤 A.T.カーニーは外資系のコンサルティング会社ですが、「日本でビジネスをするのなら日本企業のお手伝いを」ということで、ここ10年間、クライアントも外資系企業から日系企業へとどんどんシフトしていきました。今ではもうクライアントの9割前後が日系企業です。特に我々がフォーカスしている日本を代表するようないくつかの産業で、それぞれトップ3に入るような会社を中心にお手伝いしています。世界には2000人強のコンサルタントがいて、東京にいるのはそのうち120人ぐらいです。

 私自身は米国で4年間コンサルタントをやっていて、帰国したのは1999年になります。帰ってこようと思ったきっかけは、1997年に始まった日本の経済危機でした。米国という対岸から、山一証券にせよ、日本長期信用銀行にせよ、あるいは私の古巣であった日産自動車にせよ、多くの企業が破たん、あるいはその寸前までいってしまった状況を目の当たりにしていたことがきっかけです。当時は米国企業のお手伝いをする日本人コンサルタントだったわけですが、「このままの仕事では経済に対するインパクトも小さい」という気持ちがそのころから生まれていましたし、米国で4年間仕事をしてそれなりに鍛えてきたつもりでもありました。だから、「日本企業が再生するためのお手伝いを、何かできるのではないか」と思って、帰国した次第です。

 その後さまざまなクライアントと仕事をしていく中で、「この会社の再生、あるいはグローバル成長に我々もここまで貢献出来た」といった風に、それなりに達成感を持つことができるようにはなりました。しかし、ご存じの通り2008年のリーマンショック以降、再び奈落の底に突き落とされる日本企業がたくさん出てきました。今でも「どのように危機からはいあがり、もう一度世界へ挑戦していくか」を模索し続けている企業はたくさんあります。早い企業は立ち上がってもう一度ジャンプをしようということで、特に今年に入ってからは積極果敢になっている企業も多い。今はそんなフェーズであるように感じています。

 そんな中で色々と日本経済や日本企業のことを深く考えていった結果、1年半ぐらい前からでしょうか、社会に発信をしていこうという気持ちも強くなってきました。それぞれの企業にそれぞれの提案をして個別に改革や成長のお手伝いをするだけでは、我々が日本経済に与えることのできるインパクトもやはり限られてくるという思いがあったためです。1年半ぐらい前から、メディアを通して積極的に発信を行っていくようにもなりました。

 この1年間、今まではあまり行ったことのなかった官庁や政治家のところにも通い、議論をする機会が増えました。「日本はこのままで良いのでしょうか」と。その結果、今年の春に経済産業省が発表した『産業構造ビジョン2010』において、いくつかコアとなる部分で戦略策定のお手伝いをするケースにも到っています。これは今年の6月に発表されたもので、現政権の新成長戦略における骨子となるものです。このなかで我々としては、どのようにインフラ産業を輸出していくか、あるいは日本の文化産業をどのように外貨獲得の手段にしていくか、こういった部分で戦略策定のお手伝いをしています。

 今日のテーマはグローバル競争と日本ということですから、まずはマクロな視点で概論を述べるとともに、このグローバル競争をリードしている企業、特にAB InBevというビール会社の事例を紹介していきます。そして最後に日本企業が現在どのような課題に直面しており、グローバル化を加速していくうえでどんな視座が必要になるのか。その点について、多少なりともヒントになるお話をしたいと考えています。

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