【速報】エアアジアXが日本初上陸! LCCのビジネスモデルは、着陸料の高い羽田で成功するか!?秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話

» 2010年12月11日 16時12分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

アジア各都市へのチケットがわずか数千円

 マレーシアのクアラルンプールからタイのバンコクまで、日本円で3000円弱。ベトナムのホーチミンまでは2000円弱──。先日、そんな格安の航空チケットがインターネット上で販売されているのを発見した。インドネシアのジャカルタまでは、何と1000円を切っている。アジア最大の格安航空会社、エアアジアXのWebサイトでのことだ。

 今週多くの人々の注目を集めた話題といえば、このエアアジアXの日本初就航に尽きるだろう。12月9日(木)の22時30分過ぎ、クアラルンプールからの真っ赤に塗装された機体が羽田に到着した。その機体のロゴマークの下には、次のような文字が記されている──。

「NOW EVERYONE CAN FLY(いまや誰でも飛行機に乗れる)」

 かつて「われわれが航空業界に乗り込んだ2001年当時は、マレーシアで飛行機に乗れるのは人口の6%に過ぎなかった。だったら、残りの94%の人たちのために安い飛行機を飛ばせば、必ず大きなビジネスになると確信した」と語ったのは、もともとレコード会社の幹部だったエアアジア・グループの総帥、トニー・フェルナンデス氏だった。

 同社が羽田就航を記念して打ち出したキャンペーン価格は、クアラルンプールまで片道5000円。羽田就航翌日(12月10日)の会見では、キャンペーン第2弾として片道8000円での販売が発表された。

大手とは異なるビジネスモデルで格安を実現

 その“格安”を実現するため、さまざまなアイデアが導入された。例えば各便の利益率を高めるために、座席数を大手エアラインの2割増しに。機内食などのサービスはすべて有料にし、離陸後は客室乗務員が積極的に食事や飲み物を売り歩く。売上げの10%程度が歩合として客室乗務員に配分される給与体系も社内で整備された。人件費削減のため客室乗務員は機内の清掃係も兼務。運航機材の稼働率を高めるため空港にとどまる時間を減らしているのも特徴で、12月9日の羽田への就航便も、到着してからわずか1時間余りで準備を終え、日本からの乗客を乗せて再びクアラルンプールへ飛び立っていった。

 発着は各都市のメインの国際空港ではなく、あえてアクセスが不便な郊外の空港を選んでいるのも、コスト削減のための重要な戦略である。エアアジアXが拠点とするクアラルンプール国際空港でも、国際線ターミナルから10分ほど離れた貨物地区に自社専用のきわめてシンプルなターミナルを造った。

 そう考えると1つ気になるのは、使用料が高い羽田への就航はLCCのビジネスモデルとは相反するのではないか──ということ。羽田空港の国際線着陸料は、地方空港に比べて倍近い。エアアジアXが日本線で使用するエアバスA330の場合、着陸するごとに毎回約55万円の料金がかかる。羽田が使用料を値下げすることは、需要の大きさからいって当面考えられない。

 羽田をベースに、エアアジアXがどこまでビジネスを伸ばしていけるのか? CEOのアズラン・オスマンラニ氏は「現行の週3便から、数カ月以内には増便してデイリー運航(週7便)に移行させたい」と強気の姿勢をくずさないが、しばらくはじっくりと推移を見守る必要があるだろう。

エアアジアX エアアジアXが羽田線で使用する「A330-300」
“飛行機と空と旅”の話 エアアジアが2009年6月にエアバスに発注した最新鋭機「A350」(出典:Airbus)

著者プロフィール:秋本俊二

著者近影 著者近影(米国シアトル・ボーイング社にて)

 作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。

 著書に『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。

 Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。


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