なぜニホンではベンチャー企業が育ちにくいのかちきりん×磯崎哲也のマジメにおちゃらける(3)(2/3 ページ)

» 2010年12月10日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
ちきりんさん

ちきりん:甘やかされている? ということですか。

磯崎:そうです。

ちきりん:私もそう思います。著書『起業のファイナンス』(日本実業出版社)に「足りないのは資金ではなく、イケてる若者」と書いてありましたが、その通りですね。

磯崎:日本だと、例えば投資家と交渉する際にも「日本で投資を受けると、上場できないときに株式を買い戻せといった条件を付けられる」「不利な条件を押し付けられる」などと言う人が多い。そうした不条理な条件を投資契約で付けられるケースは減ってきていますが、確かにまだゼロではないかもしれません。

 しかしベンチャーキャピタルは、テレビドラマの悪人みたいに、嫌がる社長の手を押さえつけて、結びたくない契約書に無理矢理印鑑を押させるわけじゃない(笑)。経営者が「成長する資金が欲しい」というから出資しましょうかというだけのこと。また起業家も、オレオレ詐欺でダマされる判断能力のない人でもなければ、何も分からない幼稚園児ではなくて、いい大人なわけです。嫌な条件だったら嫌と言えばいいだけのこと。

 契約というのは、契約当事者双方が合意した内容を記載するものです。「ボク内気だから、本当はイヤだったけど印鑑押しちゃいました」という社長が、ビジネスシーンでちゃんと交渉できるんでしょうか? つまり、ヘンな投資契約を結ばされるというのは、その経営者自身がイケてないわけです。日本が起業家に冷たいとか、日本にへんな商慣習があるというわけでじゃない。しかし、実際はそういう例は少なからずあります。

ベンチャーは弱者では生きていけない

磯崎:例えば貸金業というものをよく分かっていない消費者は保護しなければいけませんが、会社対会社のビジネスというのはあくまで対等な関係。「大企業の製品よりちょっと劣ってるけど、ベンチャー企業だから買ってあげますよ」という話なんてありえない。

ちきりん:そうですね。

磯崎:ベンチャーを「弱者」だと思っている人がいますが、ベンチャーは弱者では生きていけない。むしろ既存の企業より、ある意味「強く」ないといけないわけです。既存企業より何倍もスピードが速い、既存企業よりコストが圧倒的に安い、既存企業より断然、品質がいい、といった感じで。

 成功しているベンチャーを見ていると、システムとか財務とか、経営の鍵になるポジションにかなりイケてる人がいる。そういう人がいないとい大企業を相手に勝てないんですよ。

 なので大企業で働く優秀な人よりも、もっとすごい人材がいないとベンチャー企業は生き残っていくのが難しいでしょうね。

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