ボルボとベンツに見る、ハイブリッドバスの未来松田雅央の時事日想(1/5 ページ)

» 2010年12月09日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 ここ10年ほど、エコカーの主流としてハイブリッドカーが急速に普及してきた。将来的にはEV(電気自動車)がエコカーの本命と言われているが、それが10年先なのか20年先なのか具体的な青写真はまだない。これからしばらくの間、ハイブリッドカーがエコカーの主役として活躍するはずだ。

 これは乗用車についての話だが、商用車にもハイブリッド化の波が押し寄せており、特にハイブリッド路線バスの開発には各メーカーがしのぎを削っている。今回の時事日想では、この秋の「ドイツ・ハノーファー国際商用車メッセ IAA2010」に出展されたボルボとメルセデス・ベンツのハイブリッドバスを取り上げたい。

ボルボ/7700 ハイブリッド

 ボルボの路線バス「7700ハイブリッド」は、ディーゼルエンジンとモーターの駆動力を利用する「パラレル方式」で、同社はこれを「Volvo I-SAM, パラレルハイブリッド・直接駆動方式」と呼んでいる。

7700ハイブリッドバス(左)、D5Fディーゼルエンジン(右)

 ディーゼルエンジン(1)はトランスミッション(3)を介して後輪を駆動し、かつモーター/発電機(2)も動かす。走行時はバッテリー(6)に蓄えられた電力でモーター/発電機を動かし、制動時は逆にモーター/発電機を回生ブレーキとして利用しエネルギーを回収する。回生ブレーキの電力はコンプレッサー、空調機、パワーステアリングなどの電気機器(7)にも直接用いられる。

 エンジンは低回転時、つまり発進時や急加速時に十分なパワーを得られないという特性を持つがモーターがこれを補ってくれる。下にあるトルク(縦軸)と回転数(横軸)の相関関係を見れば分かる通り、モーターとディーゼルエンジンを併用することにより低回転時から高回転時までムラなく高いトルクを得ることができる。

 パラレル方式はハイブリッドシステムとして最もポピュラーなものといえる。

システム概念図、(1)ディーゼルエンジン、(2)モーター/発電機、(3)トランスミッション、(4)パワーマネージメントシステム、(5)600V/24V-電力変換装置、(6)バッテリー、(7)電気機器(出典:VOLVO 7700 HYBRID)
モーター(Elektromotor)使用時、ディーゼルエンジン(Dieselmotor)使用時、モーター+ディーゼルエンジン併用時のトルク(縦軸)と回転数(横軸)の相関関係(出典:VOLVO 7700 HYBRID)
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