「お掃除するのは、ルンバの仕事」、自動掃除機躍進のヒミツ(2/2 ページ)

» 2010年12月08日 08時00分 公開
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ルンバを開発した米アイロボットとは

日本外国特派員協会での会見

 ここでもう1つ、ルンバを開発した米アイロボット社のことについて、少しご紹介したいと思います。アイロボットは、マサチューセッツ工科大学の研究者らによって設立された会社で、今年創立20周年を迎えました。それを記念して今年10月には、同社のCEOであるコリン・アングル氏が来日、日本外国特派員協会で会見を行っています。

 私も出席しましたが、ここでの話でとても興味深かったのが、「日本人はロボットというと二足歩行のものを考え、かっこいいものを作りたいと考えてしまうが、ロボットとは人間が必要としている作業をしてくれるものであり、研究やデモンストレーションだけでなく、売れるものを作って商品化しなければ意味がない」というものでした。

 この20年間に失敗を重ねながらも14のロボットを作り、ビジネスモデルを構築してきたアイロボットですが、現在北米の200ドル以上のクリーナー市場のうち、10%のシェアをルンバが占めるまでに成長してきたとのこと。「イスにぶつかってひっくり返ってしまう」「コードに絡まってしまって困る」というような課題を解決しながら、消費者の役に立つ知能を持ったものにバージョンアップしてきたことが多くの支持を集めたのだと力説していました。「研究者やロボット愛好家のものではなく、実際に使えるロボットでなければならないのだ」と。

 また、「『ハード』『センサー』『ソフト』の3つが重要なキーワードだが、これからのロボットはソフトウエアの開発に重点が置かれるだろう」とも強調していました。

高性能な人工知能を改めてアピールした意味

 アイロボットは軍事用の多目的作業ロボット「パックロボット」を作っており、爆弾処理などでも活躍しています。こうした技術や人工知能が自動掃除機ルンバにも生かされているのは、周知の事実。部屋中をくまなく、しかもエネルギー効率のよい掃除の仕方で行うという実力の裏付けにもなっています。

 10月の日本外国特派員協会での会見も、便利な自動掃除機として認知度がかなり高まったルンバを、今一度技術の側面から見てもらうことで性能の高さをアピールするものだったのではないでしょうか。

 最後に、再びCMの話に戻りますが、子育て世代や共働き家庭に照準を当てた“時短家電”という位置付けも大変興味がありますが、私個人としては、今後シニア層や介護をしている人のいる家庭にも広めてほしいと思っています。腰をかがめたり、重い掃除機を引っ張って掃除機をかけるのが辛いという人たちにとって、ボタンを押すだけで掃除をしてくれるのは本当にありがたいことのはず。介護に追われる人にとっても、掃除の手間をルンバが引き受けてくれたら、どんなに助かることでしょう。

 でも、まずは30〜40代の人たちに積極的に使ってもらい、それを見た“親世代”に広まっていく……という流れのほうが自然なのかもしれませんね。

 2002年に日本に登場しながらも、一度消えかかっていたルンバに脚光を当て、時間をかけて広げてきた日本正規総代理店セールス・オンデマンドのマーケティング手腕には注目すべきものがあります。ルンバのさらなる人気上昇に火が付くでしょうか。期待がかかります。(神原サリー)

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