「お掃除するのは、ルンバの仕事」、自動掃除機躍進のヒミツ(1/2 ページ)

» 2010年12月08日 08時00分 公開
[神原サリー,INSIGHT NOW!]
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神原サリー(かみはら・さりー)

神原サリー事務所代表取締役。青山学院女子短期大学英文科を卒業後、福武書店(現:ベネッセコーポレーション)、サンケイリビング新聞社勤務を経て、フリーランス・ライターに転身。マーケティング会社での企画・広報などを兼務した後、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立、2008年に株式会社神原サリー事務所を設立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」ことをモットーに顧客視点でのマーケティングを提案している。


 12月に入って、自動掃除機「ルンバ」の新しいCMが流れるようになりました。「赤ちゃん編」と「夫婦編」の2バージョンがありますが、いずれも「お掃除するのは、ルンバの仕事。○○するのは、あなたの仕事」というのがキャッチコピーです。

 まずは「赤ちゃん編」から見てみましょう。「天才!」とわが子を溺愛する両親の声と、思わず頬にさわりたくなるようなかわいらしい赤ちゃん。その足元で、ルンバが黙々と掃除をしている様子が映し出されます。そして……、「お掃除するのは、ルンバの仕事。愛されるのは、あなたの仕事」の文字。

 もう1つ「夫婦編」もあって、そこではかなりシビアな状況が映し出されます。どうやら、夫の携帯電話のメールを妻が見てしまったようで、「妹だよ妹」という夫の弁解に、「妹ならダーリンなんて呼ばないでしょ」と妻の冷たい言葉。そんな取り込み中の夫婦の足元では、先ほどの赤ちゃん編同様にルンバが淡々と掃除をしているというシーンが流れるのです。

 「お掃除するのは、ルンバの仕事。話し合うのはあなたの仕事」

ルンバ公式Webサイト

ターゲットは子育て・共働き家庭

 どうやら、メインターゲットは30〜40代としているようで、子育てや仕事に忙しい人たちへの“時短家電”ということを、よりアピールしていこうというのが狙いなのですね。

 これまで、主婦の嫌い(苦手)な家事といえば、1位「アイロン掛け」、2位「掃除」などと言われていました。どんなに便利で高機能な家電があったとしても、最終的には人間の手を借りて行わないとならない家事で、洗濯や炊飯のように“家電に任せっきり”ということができないからというわけです。それを覆したのが、この自動掃除機ルンバと言えるでしょう。

 今回のCMでも、掃除をルンバに任せることで家事の時間を短縮し、その分、思いっきり子どもをかわいがったり、時には夫婦で話し合いをしたりと有効に使えますよと伝えています。ルンバの掃除機としての実力が認められ、普及率も高まってきたからこその、いわば第2段階とも言えるステップに来たのだと改めて知らされた思いがします。

 ルンバが2002年に日本で初めて登場した際には、「ルンバって本当にきれいになるの?」「部屋の中を片付けなくてはいけないし、広い家じゃないと意味ないのでは?」「おもちゃみたい」など、マイナーなイメージも随分あり、その価格の高さと相まって“新し物好きの特別な人たちの掃除機”という位置付けでした。

 そんな風評を覆すべく、日本での発売当初は「お掃除ロボット・ルンバ」という名称だったのを「自動掃除機ルンバ」に変更。おもちゃっぽいイメージから、きっちりと掃除をしてくれる実力派の掃除機ということを訴求するようにし、モニターキャンペーンなどを繰り返してじわじわと口コミでその便利さが伝わるようにじっくりと時間をかけてきたことが、2010年の大ブレイクと、さらなる訴求につながったのでしょう。

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