この変化が激しいチルドカップコーヒー市場において、不動のトップの地位を占めているのがマウントレーニアである。2位以下の商品は順位やシェアの変動が発生しているのだが、マウントレーニアのトップの地位は変化していない。
マウントレーニアはなぜ売れ続けているのだろうか? 新商品が続々登場していることもあるが、それは競合のタリーズやスターバックスも得意としている戦略である。
私のマーケティング理論の根源には「消費者は販売者の意思でコントロールできる」という考え方がある。そこから考えると、コンビニの販売者(店長や店員)が喜んで拡販するだけの理由がマウントレーニアにはあるということだ。
その理由は何か? 筆者は最大の理由は「販売期間が長いこと」にあると考えている。販売期間とは、商品が納品されてから店舗で販売できる期間のこと。通常のチルドカップコーヒーだと約1週間程度のところ、マウントレーニアは約1カ月間もある。これはアセプティックカップという長期保存に向いた容器を使っていることに加えて、無菌充填を行っていることによるものである。
これによって、コンビニ側としては廃棄ロスのリスクが低下するので、安心して多めに商品在庫を用意することができる。商品在庫が増えると、陳列する棚も増えるので、消費者の商品認知度が向上し、販売量も増えるというわけである。
コンビニにおける最大の販売促進は「店頭展開」にあり、テレビCMより効果が高いことは数々の実証実験で実証済み。
もちろん、マウントレーニアはチルドカップコーヒーのパイオニアであることも有利なポイントである。しかし、それ以上にマウントレーニアは店頭展開を強化してもらうため、販売者(店長・店員)に「この商品を売りたい」と思わせることに成功しているため、王者の地位を確立できているのだろう。
船井総合研究所シニアコンサルタント。複数企業でキャリアを磨き、船井総合研究所の経営コンサルタントとして従事する。コンビニ本部等の多店舗展開チェーン企業へのコンサルティングを中心に活動。クライアント先である「NEWDAYS」の平均日販を日本一に押し上げたことが話題になる。月刊コンビニ(商業界)で連載を持つほか、著書に『コンビニのしくみ』(同文館出版)や『よくわかるこれからのスーパーバイザー』(どちらも同文館出版)がある。
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