なぜ談合は悪いのか?――公共工事で余った880万円を返金しようとした、希望社の真意新連載・嶋田淑之の「リーダーは眠らない」(5/5 ページ)

» 2010年12月03日 08時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]
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減産社会への展望

 こうした官製談合システムの打破を目指すにしても、桑原さんはそこから先、どのような社会の実現を志向しているのだろうか?

 「これまで私たちの経済社会は、大量生産・大量消費によって成長拡大してきたわけですが、地球環境問題の深刻化、生産活動の停滞、雇用縮小などによって、今や、減消費の社会へ転換する方向に向かっています。経済の自然回帰と言ってよいでしょう。

 しかし、政治家たちは国民に対して“経済のさらなる成長”というはかない夢をばらまいています。減産社会がすでに始まっていることが分かっていないとするならば、そのような人々に国政を託すことなどできませんし、逆にそれが分かっていて、そんな夢をばらまくのであれば、国民への愚弄以外の何物でもありません。

 私はカネやモノに異常なまでに執着したこれまでの生き方を捨てて、質素で控えめなライフスタイルを実現していくべきだと考えています」

 官僚による国民支配の構造が解体したならば、官僚たちはその減産社会において、どのような立場に立つことになるのだろうか?

 「公務員の身分保障をやめて労働3権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を与え、全体の30%に当たる105万人を解雇するのです。そして、彼らには減産社会でキーになる農林水産業に従事してもらいます。残った70%の人々に関しては、人件費を30%カットすることで公務員の人件費は半分になります。このような施策によって、官と民の関係も変わってくるのではないでしょうか?」

 桑原さんのこの構想が実現するかどうかは、日本の生活者1人1人の意識変革次第とも思えるが……。

 「その通りです。ですから、私はこの考え方に賛同する人々を集めて、人々への啓蒙を図りつつ、民衆による政治改革運動をやっていきたいと考えています」

 初めてこの構想に接した人には奇想天外にすら思えるかもしれないが、桑原さんはあくまでも本気である。すでに希望社の社内では社員との面談を行い、「経営理念に共感して働けるか」というポイントとともに、「減産社会を身近にとらえることができるか」という点から、今後一緒に働く社員を選んでいるという。

 政治や外交の迷走、経済の低迷や衰微、社会の停滞や混乱……分かってはいても誰にも何もできないという閉塞状況こそが、現代日本の実像だろう。

 そういう中にあって、果たして桑原さんの目指す業界革新、そして社会改革は人々の心をつかみ、首尾よく実現していくのだろうか? 今後の推移を見守りたいものである。

嶋田淑之(しまだ ひでゆき)

1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」「43の図表でわかる戦略経営」「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。


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