日本製品のお家芸、“複合価値”を科学する郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2010年12月02日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

単複マトリクスで整理しよう

 世の商品には「真の複合機能」と「見せかけの複合機能」がありそうだ。単機能・複合機能商品を挙げて多面的に考察してみよう。

 次の図は複合機能と単機能をマトリクスで整理したもの。タテ軸は「単機能」か「複合機能」か。ヨコ軸は「複雑系」か「明解系」か。

単複マトリクス

 

 多機能携帯や高機能録画装置は、本来、単機能のサービスをいろいろ詰め込み過ぎて、複雑系になるワナが潜んでいる。一方、先ごろ発売され、圧倒的な売れ行きで予約を中断した三洋電機「GOPAN」は、お米からパンを作るという新しい価値を提供した。機能が明解だし、あれこれと作りたくさせる仕組みがニクイ。

GOPAN

 「複合機能×複雑系」の雄としては「JR指定席券券売機」を挙げたい。券売機でできることは、指定席券や自由席券購入、定期券新規購入や更新、切符の受け取り、割引切符発行、乗車券・普通回数券の変更や払い戻し、予約と実に多機能に渡る。これなら“複合”と呼んでもいいだろう。だがこの機械の前で途方に暮れる人びとを見ていると、複雑系と呼びたくなる。携帯やiPadで分かりやすく操作できて、SuicaやICOCAに自動チャージしてくれれば良いのに。それなら複合ソリューションである。

 音楽プレーヤーのiPod nanoの時計表示機能を生かした、リストバンドにはさむ「nano腕時計」は新しい価値創造だ。複合機能をこんなアイデアで生かせるなんて、まさに画期的。そしてケータイ証明写真も複合かつ明解である。

 教訓。機能の単純な足し算は複雑系商品を生み、ユーザーは「機能の消化不良のワナ」に陥る。多機能ペンはデザインが醜くなる落とし穴があるし、多機能すぎるオフィスソフトウエアには何年経っても慣れない。複合はツボにハマるが、機能の足し算はワナにハマる。

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