日本製品のお家芸、“複合価値”を科学する郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2010年12月02日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷好文(ごうよしふみ)

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。他の連載は印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」、メルマガ「ビジスパ」で「ことばのデザイナーのマーケティングレシピ」。中小企業診断士。アンサー・コンサルティングLLPパートナー。ブログ「マーケティング・ブレイン」(コンサル業)、「cotoba」(執筆業)。Twitterアカウントは@Yoshifumi_Go


 “ガラパゴス”と言われる携帯電話に代表されるように、日本製品のお家芸の1つは、複合機能や多機能である。我々は日常的に複合機能や多機能を使っているが、そもそも“複合”と“多機能”はどう違うのか? 「複数機能=多機能」なのだろうか? そもそも“複合”とは何なのだろうか?

 先頃発売されたシャープのデジタルフルカラー複合機「MX-2610FN」を見た時、私の中にこんな複合的な疑問が湧いた。

MX-2610FN

 MX-2610FNは、アプリを搭載したデジタル複合機を核にして、さまざまなデバイス(PC、携帯、スマートフォン、電子リーダー「GALAPAGOS」など)をネットでつなぐというもの。

 文書の保管や共有、ダウンロードや印刷が可能。商談先で文書を修正をしてリモートオフィスで印刷できるほか、本社の電子会議議事録をクラウド上に保管して、支社で呼び出してプリントアウトすることもできる。これなら従来の複合機を超えた複合機能があると感じた。

 ご存じの通り、いわゆる複合機とはコピーやプリンタ、スキャナやファックスの各機能を1つにしたマシンのこと。しかし、それは「多機能の一体化」に過ぎない。コピーやファックスは紙から紙へ、プリンタはPCから紙へ、スキャナはPCへ保存(いずれ紙へ)と、いずれも紙印刷に関わる単機能の寄せ集めでしかない。それなのになぜ複合機と呼ぶのか。まさか、「複写機に“複”という文字があったから」ではないでしょうね。

 言葉遊びではなく、複合というからには、機能と機能がガチンコして融合し、別の機能が生まれて「おっ、これはいいね!」と使用者がハッとするだけの価値があるはずだ。それがあるサービスを1つ紹介しよう。

悩みと欲求の複合要素を見事に解決

 それはビートンソリューションの「ケータイ証明写真」。

ケータイ証明写真

 ケータイ証明写真ではまず、携帯カメラで自分撮り、または友達撮りをしてもらう。そして、証明写真のサイズを決めて、撮影画像をメールで送信。返信メールに書いてあるプリント予約番号を持って、セブン-イレブンへ。複合機(ゼロックス製)で出力して、3枚200円で仕上がる。画像プリントなので、パスポートなど厳密な証明写真には難しいかもしれないが、免許証申請や履歴書、タスポなどには十分。

 証明写真ボックスにいざ行く段になると、どこにあったか覚えていなくて迷った経験がある人も多いだろうか。やっとボックスを見つけて撮っても、人相が悪い写真になって「700円損した」と思ったり。では、写真館の撮影サービスはどうか。ちゃんと撮ってくれるのはいいが、高品質が不要な証明写真としては高過ぎる。証明写真には、こんな悩みと欲求が複合的にからまっている。

 その複合の絡み合いを、いつでも何度でもタダで撮り直せる携帯、電子メール送信というスピードと簡便さ、そしてどこのセブン-イレブンでも印刷して、お持ち帰りできるという異質の組み合わせで解いた。複写機のプリンタ機能を鮮やかに生かした。プリンタ、スキャナ、ファックスの個別の機能を単純に束ねただけでは、こんなサービスは生まれない。これこそ複合機の真の複合的活用法である。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.