バナナ自動販売機に秘められた恐るべき戦略それゆけ! カナモリさん(1/2 ページ)

» 2010年12月01日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2010年11月26日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


 バナナといえば、2008年にTBS系のテレビ番組でオペラ歌手の森久美子が挑戦した「朝食に水とバナナだけを摂る」という「朝バナナダイエット」を覚えているだろうか。話題が話題を呼び、全国のスーパーの店頭からバナナが軒並み売り切れになる騒動が起こったが、熱しやすく冷めやすいのが日本の消費者。昨今ではどこのスーパーにもバナナはきちんと並んでいる。

 バナナ自動販売機は「バナナブームよ、もう一度」という狙いではないようだ。ブームに頼らずとも、国内の果実消費量が減少傾向にあるのに対し、バナナの消費量は増加傾向にある。輸入果実の中でも数量、金額とも最多であり2005年時点で輸入果実(輸入統計品目表第8類)では、数量では48.5%、価額では25.3%を占めているという(神戸税関資料より)。さらに、貿易統計によると2009年の輸入量は過去最高の125万トンに達している。

 「バナナ自動販売機」を展開した株式会社ドールによれば、「忙しくてなかなかスーパーマーケットにも行けず、健康や美容のためにフルーツを取りたくても取れない1人暮らしの学生やビジネスパーソンをはじめとした、あらゆるお客様の声にお応えする日本初のサービスです」と狙いを語っている(7月22日同社ニュースリリース)。

 朝バナナダイエット騒動の後からか、一部のコンビニエンスストアやスターバックスでも1本売りのバナナを目にするようになった。バナナの販路は増えている。しかも、ターゲットとする「1人暮らしの学生やビジネスパーソン」が立ち寄りそうなところに。

 しかし、そこで目にするものの、筆者は購入している人の姿をあまり見たことがない。ランチにバナナをむさぼるビジネスパーソンを見たことがあるだろうか。やはりない。スーパーで房を買い、家庭で摂取する機会は増えてはいるものの、外でバナナを食べる習慣がまだまだ定着していない。「そこにあっても、手に取らない」ということが問題なのだろう。

 「ドール」といえば、「バナナ」だ。実際にはパイナップルやグレープフルーツ、キウイやパパイヤ、マンゴーなどさまざまな果物を扱っているにも関わらずだ。「バナナはおやつ300円までの中に入りますか〜?」という、こどもの頃の憧れのブランド(←かなり年齢がバレる……)だったからというワケだけではない。最近では、テレビでは香取慎吾がアタマや耳、ひげ、指にまでバナナを生やした「Doleマン」にふんしたコミカルなCMが忘れられないからという理由も大きい。なのに、若者やビジネスパーソンは買っていない。……もしかしたら、「若者のバナナ離れ」か? まさか、バナナからも?

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