労働組合って必要なんだけどねちきりんの“社会派”で行こう!(2/3 ページ)

» 2010年11月22日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

労組が支持されないワケ

 労働組合も、時代に応じた役割転換ができていないために存在意義が疑われている代表的な組織でしょう。労組の組織率はどこでも大きく下がっています。しかしながら、昔と比べて労組の必要性が小さくなったわけではありません。むしろ昔より今の方が重要なはずです。

労働組合組織率の推移(出典:厚生労働省)

 バブル崩壊までの日本は経済成長していました。ところが今は縮小している市場もたくさんあります。労使間での成果の配分を巡る交渉は、パイ全体が大きくなっていた昔より今の方が熾烈(しれつ)なはずで、こういう低成長時代こそ労組の存在価値は高くなるはずです。

 それにも関わらず、今、既存労組の存在価値を認める人は多くありません。それは労組(の幹部)が、自分たちの役割を時代に応じて変化させることを拒み、相変わらず50年前と同じ活動を続けているからです。

 例えば、彼らはいまだに労使問題とは関係の薄い政治問題にも関わり続けています。契約途中で雇い止めにあったり、法律で加入義務がある社会保険に未加入のまま働かされるなど、ギリギリのところまで虐げられている労働者にとって、しばしば労組の掲げる「●●戦争断固反対!」というスローガンが自分たちの利益につながるとは納得しがたいでしょう。

 また、いまだに正社員以外の労働者を完全に対等な仲間とは認識していません。一部では、非正規労働者も組織に入れるようにしようという動きもありますが、あくまで周辺的な活動にすぎません。

 加えて、労組は経営者よりも相当に“時代遅れ”です。例えば、彼らはいまだに「男性が外で働き、女性は家で家事と育児を担当」という概念から抜け出せていません。このため、「育児休暇はもちろん有給休暇さえ満足にとらず、辞令1本で単身赴任もいとわない」という男性の働き方の改善にはまったくもって消極的で、交渉といえば賃金や賞与のことばかりです。

 労組が時代から取り残されている1つの要因は、彼らが経営者側に比べても圧倒的に国内志向で、世界の動きを知らないことにあるでしょう。女性の活用方法、多様性を尊重することの意義、非正規労働者の増加への対応方法や、大組織のガバナンスのあり方など、経営者側は世界の先進的、戦略的な動きをビビッドに目にしています。

 一方、労組はリーマンショック直後に生活費が上がったという理由で賃上げの要求をして、経営者側からだけでなく、労働者側からも嘲笑(ちょうしょう)されるなど、マーケティングという概念さえ理解せず、交渉の立ち居振る舞い方をまったく間違えています。

 人事政策に関しても、経営者側が世界中の支社の従業員の採用や育成、評価を手がけているのに対して、労組は日本だけで分断して組織され、日本人だけで運営されています。これではいつまでも日本だけで通用する理屈を振り回すことになるでしょう。

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