コラム
» 2010年11月15日 08時16分 UPDATE

藤田正美の時事日想:かつての日本とは違う……中国が世界企業を買い漁っている (1/2)

英エコノミスト誌の最新号では「中国による買収」というタイトルで特集を組んでいる。バブル経済を謳歌していたころの日本も米国の企業や不動産を買い漁っていたが、当時の日本と今の中国――どこがどのように違うのだろうか。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 英エコノミスト誌最新号は「中国による買収」特集である(関連リンク)。1980年代、日本が米国の企業や不動産を買いまくった。ニューヨークのロックフェラーセンターやコロンビア映画の買収は大きな話題になり、ニューズウィーク誌は「日本の侵略」というカバータイトルをつけた。同誌が「ボスはジャパニーズ」という特集を組んだのもこのころだったと記憶する。この後、すぐに日本のバブルが弾けて、日本企業は海外資産を結局手放すことになり、多くの場合かなり損をした。借金を返済してバランスシートを立て直すことが先決だったから、仕方がなかったということだろう。

 そしていま世界第2位の経済規模に成長した中国が、新しい買い手として登場してきた。そして日本のときとはまた違う種類の反発を受けている。以下エコノミスト誌の記事を紹介する。

中国企業が海外に進出する理由

 中国企業は純粋の民間企業ではなく、中国共産党が経営に関わっていることも多い。そして時には、利益を求めるというよりも政治的な理由で動く。2010年、中国企業による国境をまたいだ買収金額は、世界総額の約10%に達している。

 「そして一部には、共産主義者にも自由市場の原則をそのまま適用して西側の企業を買収する自由を与えるのは、あまりにも原則論に過ぎるという議論もある。しかしまさにそうすべきなのである。中国の資本が世界に流れれば、その流入先の企業あるいは国は潤うことになるし、結局は世界全体も潤うからだ。

 政府が経営に関与している企業は、これまで民営化するまでの「途中経過」と見なされてきた。しかし新興国の膨大な貯蓄、石油産出国の富、自由市場モデルに対する信頼感の低下などによって、「国家資本主義」が復活している。世界の株式時価総額の5分の1はこうした企業で占められており、10年前の2倍以上になった。

 中国企業が海外に進出する理由は、他の企業と変わらない。原材料を得るため、技術的なノウハウを得るため、そして市場を得るためだ。ただ中国の企業は国家の指導を受けている。そして中国という国家は、多くの国が同盟国ではなく戦略的競争相手と見なしている。いったん買収されると、資源企業は中華帝国だけに供給するということになりかねない。一部には「中国株式会社」はそれ以上に腹黒いかもしれないと考える向きもある。例えば米国は、中国の通信機器企業は国家安全保障上の脅威と考えている。

 資源の配分もマーケットではなく、政治によって行われるかもしれない。そうした声が高まる中で、カナダやオーストラリアはこれまで買収に関してオープンだったが、最近、中国の政府系企業に対してはハードルを設けた」

       1|2 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -

ITmedia 総力特集