コラム
» 2010年11月12日 08時00分 UPDATE

「分からないことはお客さまに聞け」の落とし穴 (1/3)

「分からないことはお客さまに聞け」と言われたり、思ったりしたことはないだろうか? 筆者は、お客さまに聞いて学んでいいのは、「お客さまの理想像」と「苦情とご指摘」だけだと主張する。

[今野誠一,INSIGHT NOW!]
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今野誠一(いまの・せいいち)

マングローブ社長。組織変革と、その担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。そのかたわら、経営者コミュニティサイト「MG-NET+(マグネットプラス)」編集長として経営者同士のネットワーク作りにも取り組んでいる。著書に『マングローブが教えてくれた働き方 ナチュラル経営のススメ』(ブルース・インターアクションズ)。


 私が修行時代を送った会社は急成長していました。その過程では、好んで「偉大なる素人集団」という言葉が使われ、「分からないことはお客さまに聞け」という言葉が合言葉になっていました。

 急成長企業が、強気の新卒大量採用を行い、さらなる事業拡大を仕掛けていく過程では、ビジネスマンとして多くの社員が未成熟なまま世の中に出ていかざるをえません。圧倒的な商品力を持っていて、商品を理解しさえすれば、フットワークの良い元気な若者たちが拡販することで事業を拡大していくことができる。「若さを売り物に、無邪気に素直に、分からないことは堂々とお客さまに聞いて、前に進め」ということです。

 若者ばかりで、いかにも危うい状態で経営せざるを得ないベンチャー企業などでは、それを逆手にとってパワーに変えていくために「分からないことはお客さまに聞け」と言います。

 しかし、この戦略は商品力が「圧倒的」で、「誰がやっても売れる」というような状態でなければ成り立たない乱暴な戦略です。お客さまの声を充分反映して商品開発やサービスの見直しに生かしていくために、顧客重視の姿勢をうたう意味で「お客さまに学べ」という掛け声をかける場合がありますが、それと「分からないことはお客さまに聞け」では意味が違います。

お客さまの学びを先取りする

 お客さまを超える専門性を持ち、価値のある商品を提供する。それがもちろん商売として正常な状態です。その道の専門家として、圧倒的な勉強量が必要なわけで、それは自分の責任で確保していかなくてはいけないことです。また知識と同じように圧倒的な経験量も必要でしょう。

 時として、非常に勉強熱心なお客さまがいて、商品やサービスを提供する側よりも部分的には知識や経験が上回っていることがあります。こういう場合であっても、提供する商品やサービス(コンサルティングなども含めて)の範囲については、お客さまが何に問題意識を持ち、何に興味を持って学ぼうとしているかを察知して、学びを先取りしなくてはなりません。

 「分からないことはお客さまに聞け」などというのは、甘え以外のなにものでもありません。プロとしてあるまじきことです。

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