コンビニのパスタが、“モチモチ”している理由を探る郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2010年11月11日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

24時間後のモチモチを目指して

ブランディングプロジェクトチームのリーダー水島史喜さん

 「コンビニでは製造後1日経ったものを食べていただきます。24時間後に茹でたてに近い状態で食べてもらいたい。それがプロジェクトチームのミッションでした」と水島さん。

 ローソンではパスタの品目を13種類まで増やしていたが、販売成績が上がらなかった。水島さんたちは、社内の商品分析担当者や技術開発担当者の意見のほか、ユーザーの生の声も聞いていった。一体何が足りないのか? 浮かびあがってきたキーワードが「モチモチ」だった。

 ここ数年、モチモチ食感が巷で流行している。パスタだけでなくベーグル、蒸しパン、ドーナツ、もちろんお餅やお米も、モチモチが好まれる。好まれる背景にちぎる楽しさ、舌触りの楽しさ、噛む楽しさなどが、食プロセスを豊かにしてくれるからではないだろうか。

 さて問題は24時間経過後。具材とパスタのお口の中のシンフォニーをどうしたら達成できるのか? 難しい課題だったが、さまざまな製法にあたり、絞り込んだのが「真空押し出し製法」だった。

 「それまでにも押し出すという製法はあったのですが、大量生産のコンビニにそれを持ち込むのは初めてでした」と水島さん。

 麺づくりは「平らに伸ばしてカットするか」「押し出すか」のどちらか。蕎麦やラーメンなどではカットする。乾麺のパスタや家庭用には押し出しもあるが、生パスタを大量生産するものではない。工場にも製粉メーカーにも事例がなかった。もちろんローソンの開発陣にもなかった。

 そこでデュラムセモリナ(小麦を粗挽きにしたもの)の挽き具合、製粉比率調整から始めた。均一に押せて切れないパスタづくりを目指した結果、24時間後に電子レンジでチンした後に最適のモチモチ感となるパスタができた。そして2009年9月に7品目でスタート。5品目減らしたことに対し、現場からは反対の声も。しかし従来の1.2〜1.5倍のガッツリ量、本格志向と頃合いと量で勝負した。結果は対前年比150%の大ヒットである。

 また2010年夏からはサラダタイプを投入し、顧客層を女性に拡大。口コミ人気に火が点いた。さらに105円のサラダをついでに買う男性も増え、パスタをヘルシーに食べるトレンドが定着した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.