“未払い残業”の争いが増える、3つの理由吉田典史の時事日想(2/4 ページ)

» 2010年11月05日 00時08分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

 もう1つの理由は、一部の弁護士や司法書士などの存在である。彼らはここ数年、消費者金融などを利用する人に対し「支払いすぎたお金を取り戻そう」と呼びかけている。先日も、私の住むマンションのポストにそのチラシが投かんされていた。

 しかし改正貸金業法の施行により、いわゆる“グレーゾーン”金利が撤廃された(関連記事)。こうした動きは利用者からすると、金利を払いすぎることがなくなるということ。そこで、一部の弁護士や司法書士などは新たなビジネスチャンスとして、未払い残業代に目をつけた。ある法律事務所のチラシには、このようなことが書かれてある。

(ある法律事務所のチラシ)

 「残業代の請求は、退職後さかのぼって2年間分はできます。初期費用は〇万円。裁判のための印紙代などの実費は、当事務所で立て替え支払いをします。会社から残業代の支払いを受けたときに精算していただきます。成功報酬は、会社から支払いを受けた金額の20%(税別)となります」

※編集部注:表現を一部変更しております。

「自分ももらえるのではないか」と期待する会社員

 3つ目の理由として、多くの企業では残業の時間管理が厳密にできていないことがある。出社や退社の時間の記録すら不十分なケースが目立つ。出社や退社時に打刻するタイムカードの扱いについては、これまでにいくども裁判で争われてきた。通常、タイムカードに打刻された時間は、労働時間として認められる可能性が高い。

 この残業時間の管理について、社会保険労務士の滝口修一氏(NPO個別紛争処理センター副理事長)はこう語る。「残業代トラブルの主な原因は、あいまいな労務管理にある。労働者はインターネットでそのような情報を得て、自分ももらえるのではないかと期待する。まずは、労働時間管理を明確にすることが予防策になる」

 滝口氏は、適切な会社のルール(就業規則など)を作成する、もしくは見直すことから始めることを提言する。さらに必要であれば、変形労働時間※を検討する。また身勝手な残業を予防するために、許可制、確認制などのシステムを運用することも必要と述べる。

※1週48時間勤務したときは8時間分の残業手当が必要になる。しかし変形労働時間制であれば1カ月を平均して週40時間以内なら、1カ月内に48時間勤務した週があっても残業手当を支払わなくてもよい。

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