コラム
» 2010年11月05日 00時08分 UPDATE

吉田典史の時事日想:“未払い残業”の争いが増える、3つの理由 (1/4)

退職者が、かつて勤務した会社に対し「未払い残業代を支払え」と訴えるケースが増えている。こうした問題が起きる背景には、何が潜んでいるのだろうか。筆者の吉田氏が取材を通じて分かったこととは……。

[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 「未払い残業代」――。

 これがいま、多くの経営者や役員、人事部の社員たちを苦しめている。最近は退職者が数人で徒党を組んで、かつて勤務した会社に「未払い残業代を支払え!」と訴えるケースが増えているのだ。

 未払い残業とは、労働者が、労働基準法に定められている「労働時間」を働いたにも関わらず、支払ってもらえない賃金の総称を言う。詳しくは、のちほど解説する。

 厚生労働省は毎年秋に「賃金不払残業(サービス残業)是正の結果まとめ」を発表するが、先日、2009年の調査結果が明らかになった(参照リンク)。それによると、2009年4月から2010年3月の間に、全国の労働基準監督が定期監督および申告に基づく監督などを行った。そして企業に是正指導を行い、不払いになっていた割増賃金が労働者に支払われた。その額が100万円以上になった企業は1000社を超えた。

是正企業数:1221企業

対象労働者数:11万1889人

支払われた割増賃金の合計額:116億298万円

(企業平均は950万円、労働者平均は10万円)

 1企業の最高支払額ワースト3は、以下の通り。この数字を見ると、経営者や役員、人事部の社員たちは考え込んでしまうのではないだろうか。

1位:12億4206万円(飲食店)

2位:11億561万円(銀行・信託業)

3位:5億3913万円(病院)

 私が2年前の冬に取材した中小企業(東京墨田区、社員数50人ほど)でも、同じようなことが起きた。退職した元社員(30代男性2〜3人)がその会社を「残業代が未払い」として労働基準監督署に訴えた。50代の経営者は監督署から呼び出しを受け、そこで数回に渡り、話し合いをした。結局、会社は2〜3人に600万円近い金額を支払うことになったという。

 ここに出入りする業者(印刷会社)によると、経営者がこのメンバーのリーダー格を厳しく叱責(しっせき)し、彼がそれに逆恨みをしたことが一因だという。いまや会社員の企業への意識は変わりつつあるのだ。次の図は、労働者が全国の労働基準監督署に持ち込んだ労働相談の件数だが、年を追うごとに増えている。ここがまず、未払い残業代の争いが増える一因だと私は考えている。

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