成功する事業は社会的ニーズが説明できる――CSR活動の本質とは?郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2010年11月04日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「マーケティング・ブレイン」(コンサル業)、「cotoba」(執筆業)。Twitterアカウントは@Yoshifumi_Go


 「ようやく、自分のやってきたことがつながりました」

 NECのCSR推進部で社会貢献室マネージャーを務める村上雅彦さんは語る。私が村上さんを知ったのは、英国発の社会貢献活動ブラストビートを広報する「社会起業支援サミット2010」でのことだ。ブラストビートとは、高校生や大学生がチームを組み、メンバーがそれぞれ社長や財務、マーケティングなどの役割を分担し、音楽イベントやアルバム発売を実践する「音楽×起業×社会貢献活動」である。イベントのトークショーで、パネリストとして登壇した村上さんがこう言った。

 「CSRといえばこれまで企業の窓際でしたが、今、社会の課題を解決する職種として認知されました」

 確かに近年、脚光を浴びているCSRだが、その本当の価値とは何なのだろう? 村上さんの話を聞いてみたいと思った。

村上雅彦さん

NECの「農業ソリューション」とは?

 冒頭の「ようやく、自分のやってきたことがつながりました」に話は戻る。まだベルリンの壁が東西ドイツを分けていた1980年代初頭、大学生だった村上さんは「海外に出てみよう」という好奇心から欧州各地を歩いた。

 アルジェリアでLNG施設建設現場の監督者として働き、地中海各地を経て帰国。いったん大手企業で働くも、オーストラリア貿易促進庁に転職し、貿易ソリューションで日豪をつなぐ仕事をした。具体的にはどんなことを?

 「タマネギを作っていたんです」

 日本の流通業の野菜の安定調達や、調味料企業の安価な材料調達といったニーズに応えて、西オーストラリアのパースの農地を手当てし、現地での播種、育成、保管、出荷までを支援する業務だ。当初の数年は出張ベースで日本とオーストラリアとを往復。その後、意を決してパースに居住し、合弁会社を設立、10数年農業と向き合った。パースの乾燥した地には、タマネギやニンジンなどの根菜が適していた。

 「その経験がNECでの農業ソリューションに結び付くのですね」

 「そうなんです。開発途上国では経済活動の主力は農業です。例えば、エチオピアの耕地面積は欧州全域に匹敵します。開発途上国にとってNECのIT技術が“農業支援”になるんです。支援活動が成功すれば、途上国のBOP(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド=貧困層)の年間所得3000ドルが5000ドルとなる。その経済効果は5兆ドル(400兆円)にものぼります」

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